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Sweden 旅の途中で(2014年③)花・花・笑顔が咲く

この記事の目次

掲載号:The SWEDEN HOUSE No.160

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花・花・笑顔が咲く

五月になるとスウェーデンでは春の花も夏の花も一気に咲く。眠っていた冬の地面から、緑の生命が溢れ出すように。庭を持つ家では、花の手入れに勤しみ、明るい太陽を浴びて珈琲タイムを楽しむ。この絵も「庭続きの2つの家庭」に見えると思うが、実はそうではない。

ここはストックホルム市内にある区画庭園地帯。日本のいわゆる「市民農園」の区画割りよりは広いが、本当に小さな庭園だ。ここにはきちんとした約束事がある。各敷地内にトイレ設置は禁止(公衆トイレ有り)。珈琲を飲んだり、お昼寝しても良いが住んではいけない。休息所の建物は東屋くらいの大きさまで。

区画庭園の歴史は100年も前に遡る。どこの国でもあることだが、地方から次第に都市に人口が集中しだした。庭付きの住宅に住める人は少ない。特にブルーカラーの労働者は、狭い集合住宅だ。日本ならば、この先の話はありえないだろう。が、スウェーデンでは「花や自然と触れ合ってこそ人間生活」という考え方なので、庭の無い人々に集合住宅ならぬ集合庭園を市が提供した。そして、労働者は「小さな庭園」を得て、仕事と菜園の2つで心身の健康を維持できるようになったという。

時代はかわり、現在の持ち主はブルーカラーというわけではない。大学教授や芸術家など、ここに憧れて手に入れた人が多いとか。みな昔からのルールを守って庭園生活を楽しんでいる。

昨春、知人とここを歩いていた。ある建物に向かって「ねえ、居るー?」と声を掛けると建物の中からにこやかな婦人が現れた。「久しぶりー!」と世間話に花を咲かせている。陽はうららかで、優しい風に花々が揺れている。

なんとも幸せな時間を私もいただいた。

 

Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。

Instagram(@setsukofukai)

 

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