「森のしあわせ通信」60-70年代テキスタイルの再生プロジェクト

この記事の目次

60-70年代テキスタイルの再生プロジェクト

2020年春、スウェーデン発の新しいテキスタイルブランドNORDISKA TYGERが日本で始動しました。NORDISKA TYGERはスウェーデン語で "北欧テキスタイル” を意味します。

数々のテキスタイルデザイナーと強いパイプを持つ、テキスタイルのコレクター サラ・アクステリウス著の、北欧インテリアテキスタイルのバイブル本「TYGER VI MINNS FRÅN 1960- OCH 70- TALEN」「RETRO TYGER VI MINNS」に掲載された、北欧テキスタイルの黄金期1960-70年代の生地をもとに、順を追ってデザインを復刻するブランドNORDISKA TYGER。1960-70年代はスウェーデンにおいて、数々のテキスタイルデザインが誕生した時代で、戦後を経て経済が落ち着き、多くのものが生産され、人々が豊かに暮らし始めた時期でもあります。今回のローンチで再生したデザインの中には当時考案されたものの実際には市場に出回らなかった作品や、生地巾調整のため40年以上もの時を経て、パターンの両端に幸運のてんとう虫を含むデザインが追加されたブローフォーゲル(Blå fågel)、ストックホルム中心部に位置する王様公園(Kungsträdgården)で1971年に起こったニレの木伐採の反対運動「エルム紛争(Almstriden)」に触発されたトレー(Träd)など、貴重な作品が揃います。

また環境問題が重要視される昨今、NORDISKA TYGERは持続可能な開発目標(SDGs)に添い、通常のコットンと比べて、農業用水の使用を91%減らし、エネルギー使用量を62%減らすオーガニックコットン(*)を使用して、地球環境問題にも取り組んでいます。労働環境の改善、労働者への対価の保証、労働者を含むブランドに関わる全ての人の人生を豊かにする、本当の意味での持続可能性を追求し、その必要性、重要性を訴求しつつ、日本のマーケットに環境問題を喚起しながら、活動を行っているのです。

スウェーデンに見られる真冬の厳しい自然環境下では人々が外に出歩くことも少なく、必然的に家の中で過ごす時間が長くなります。だからこそスウェーデンの人々は飽きがこない、機能的且つ見た目にも美しい優れた物選びをします。そしてそのようなシンプルなアイテムに草花や動物の絵柄、華やかな色合いのテキスタイルを追加して、季節感や個性を表し、手頃で簡単に室内の雰囲気を変えコーディネートを楽しみます。

NORDISKA TYGERのテキスタイルは、まさに厳しい自然環境の中で生き抜く生活の知恵や習慣が生み出した、スウェーデン特有のカラフルな柄、ポップな雰囲気、自然からインスピレーションを得た心が落ち着く画など、暮らしのエッセンスとして必要とされるアイテムばかりです。スタイリッシュに暮らしを楽しむためのエイジレスなブランドであり、60年代、70年代にスターデザイナーであったデザイナーたちの人生ストーリーをも感じる、心豊かな作品郡は、我々日本人の暮らしにもしっくりと馴染み、より良い日常をもたらしてくれることでしょう。

*アメリカのNPO法人であるTE(テキスタイル・エクスチェンジ)と環境コンサルタント企業のPE International社のデータによる。

main_002_sweden171970年前後にデザイナーシェル・ボリーンによってデザインされた作品Träd。ニレの木がモチーフ
Photo:日本フィスバ/クリスチャン・フィッシュバッハ

スウェーデンテキスタイルの歴史

北欧では昔から織物が伝統工芸とされ、特にスウェーデンはリネン製品やダマスク織りを国内外に普及させてきました。また当時のスウェーデン王カール10世の王妃、ヘートヴィヒ・エレオノーラが、1696年に織物工場にテーブルクロスとナプキンを大量発注したことも織物業の成長を促したと言われています。1731年、民間会社がヨーテボリにスウェーデンの東インド会社を設立し、主に中国からの様々な品を輸入しました。当時中国やインドから輸入されたプリント柄のコットン生地は最高級品とされていましたが、1700年代後半、それらの技術やデザインが国内に取り入れられると、テキスタイル製品の製造が加速し、商品の価格を下げることに成功したのです。テキスタイル製品が一般の人々にも普及したことで、ヨーテボリ周辺には多くの織物工場が誕生し、常に製造技術を向上させながら独自のテキスタイル文化を築き上げてきました。1800年代後半、数名のスウェーデン人によって、手工芸協会が立ち上げられ、彼らの運動によりスウェーデンの生地や伝統的な手織り物、タペストリーは、バイヤーや商人を魅了し、たちまち世界に広がりました。このようにして織物を始めとするテキスタイル業界は、スウェーデン経済に大きな影響を与えるようになりました。1800年代に誕生した多くのテキスタイルメーカーは、今日もスウェーデンに現存し、伝統を守りながらも革新的に世界へ発信し続けています。

main_003_sweden17 日本の文化がインスピレーションの源と話すアイノ オスタグレンの1978年の作品Linie
Photo:日本フィスバ/クリスチャン・フィッシュバッハ

main_004_sweden171967年に発表されストックホルム国立博物館のコレクションに所蔵されているNippon
Photo:日本フィスバ/クリスチャン・フィッシュバッハ

main_005_sweden17 1972年に生まれたVisionの波のデザインは、当時ホームデコレーション、商業施設にインパクトを与えた
Photo:日本フィスバ/クリスチャン・フィッシュバッハ

main_006_sweden17テーブルクロスにもなるマルチクロスは公式ECサイトで購入可能
Photo:日本フィスバ/クリスチャン・フィッシュバッハ

NORDISKA TYGER 公式ホームページ→

■NORDISKA TYGER 公式オンラインショップ→

 


writer_photo堀 紋⼦:北欧ジャーナリスト&コーディネーター

10代でスウェーデンに渡り、ガラスのテクニックとデザインを習得後、ストックホルムで活躍するガラス作家に師事。帰国後、創作活動の傍ら北欧の⽂化イベントを企画開催。その後北欧情報誌の現地コーディネートやプランニングに携わる。現在は独⽴し東京とパリにオフィスを持ちながら、ヨーロッパの暮らしや料理の提案、執筆、現地コーディネート、北欧企業のビジネスサポート、PRを⼿がけるなど活動の幅は多岐にわたる。

 

< 2020年 4月号 無料の学校給食   2020年 6月号 一年で最高のシーズン >

  • メルマガ登録