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「森のしあわせ通信」Vol.4 シンプルで上質なもの選び − 見せる収納

この記事の目次

シンプルで上質なもの選び − 見せる収納

スウェーデンを始めとする北欧の人々はモノ選びに慎重です。とりあえず、というモノの買い方をあまりしません。それは例え小さな数百円程度の日用品であってもです。本当に必要なものなのかどうか、そしてそれが自分にとってずっと使いたいと思えるものなのか、もしくは次に引き継ぐことのできるものなのか、そんな風に悩みに悩んで最終的に購入の決断をします。日本のように一つのモノに対して手頃な価格から高額なものまで、選択肢が多いわけではないというカラクリはあるけれど、とは言え購入することを入り口として、将来いつかは必ず訪れるモノの行き先を出口とするならば、入り口のタイミングですでに出口を考えてモノ選びをするのが基本です。北欧には「お金がないときほど、良いものを買いなさい」ということわざがあって、多くの人が両親や祖父母に小さい頃から言い聞かされています。そのためこのことを念頭において、大小関わらずに一つひとつのモノを日々慎重に選択しているのです。

実はそんなモノ選びをしていると、3つのメリットに出会えます。まず1つ目のメリットは家にモノが溢れないということ。とりあえず、で買ったものはその時一瞬は必要だったので活用するけれど、時間が経つといらないもの、ずっとしまっておくものになりがちです。特に気に入って買ったわけでもないし、価格もお手頃だったならば、ぽいっと手放しやすい感情にもなります。そういうモノがたくさん増えると家の中はごちゃごちゃしてきます。慎重なモノ選びはモノが溢れず家の中がすっきりとする利点があるのです。


01_mori_hokuou_Vol04隠すものと見せるものを上手に分けたスウェーデンのインテリア術
Photo: String Furniture

2つ目のメリットは自分の好きなものだけに囲まれた暮らしが実現できるということです。スウェーデンの人々は自分の好きなモノ、気に入ったモノだけに囲まれた暮らしを実践しています。ことわざではないにしろ「美しいものだけを日常に」という考え方が一般的に浸透しているので、家の中にあるものは自分のお気に入りが多く、モノを外に出しておいてもその佇まいは美しかったり、自分にとって心地よかったりします。ただただしまっておくのではなく、どんなものでも見せて収納しておくことができる北欧のインテリア術には、このようなモノ選びの背景が関係しています。そのため無償でもらえるノベルティであっても、自分のスタイルや好みに合わなければ多くの人は断ります。そもそもノベルティを配布するカルチャーがあまりないのも日本との違いかもしれません。

そして3つ目はサステナビリティに繋がっているということです。サステナビリティというと日本では最新技術を駆使して生まれた電気自動車や、地球に優しい素材や原料が使われている、などのうたい文句が思い浮かびそうですが、北欧ではサステナビリティはもはや当たり前で、あえて大きな声では言いません。またそのモノが例え持続可能な原料で作られたものであったとしても、それを短い期間で手放し捨てるとなれば、サステナビリティとは言えません。検討に検討を重ねて納得してから購入したモノは、そのものの命が果てるまで長く使い続けるようになります。それこそが北欧における持続可能性の第一歩と言えます。

このことは北欧のインテリアや日用品だけではなく、衣類にも通じています。スウェーデンには流行を取り入れた購入しやすい価格帯のブランドが存在しますが、どちらかと言えば服に対しても流行り廃りのないシンプルで長く使える機能性や快適性、メンテナンスのしやすさを重視します。現地のクリーニング店は日本よりも2、3倍価格が高くて、普段着は自分で洗うことが多く、また洗濯機では熱いお湯を使うので丈夫で手入れが簡単であることも必須です。シンプルだけど色使いなどによって個性を見出し、おしゃれを楽しむ北欧の人たちは、自分の生き方や暮らしに合ったモノを選び、飽きの来ないずっと使えるようなシンプルさや品質の良さを大切にしています。

最近に至っては美しさ、可愛さは当たり前のことで、そのモノの背景を重んじる傾向にもあります。誕生ストーリーや企業・ブランドの善良な理念を知り、モノを購入する人が増えています。消費自体に責任を持ちながら、納得して選んだモノのため、自信を持ってそのモノを愛用し着用しています。モノ選びは豊かな暮らしそのものに直結した、人生の選択の一つとも言えるのではないでしょうか。


02_mori_hokuou_Vol04 好きなものに囲まれた生活は心地よい暮らしに繋がります
Photo: String Furniture

03_mori_hokuou_Vol04少なくても豊かに、という考え方が北欧の暮らしの土台にあります
Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

04_mori_hokuou_Vol04 何百年も受け継がれてきた家にモダンな家具を置いた空間
Photo: Martin Edström/imagebank.sweden.se

05_mori_hokuou_Vol04毎日使う食器であれば取りやすいように飾りながら収納するのもおすすめです
Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

 


writer_photo堀 紋⼦:北欧ジャーナリスト&コーディネーター

10代でスウェーデンに渡り、ガラスのテクニックとデザインを習得後、ストックホルムで活躍するガラス作家に師事。帰国後、創作活動の傍ら北欧の⽂化イベントを企画開催。その後北欧情報誌の現地コーディネートやプランニングに携わる。現在は独⽴し東京とパリにオフィスを持ちながら、ヨーロッパの暮らしや料理の提案、執筆、現地コーディネート、北欧企業のビジネスサポート、PRを⼿がけるなど活動の幅は多岐にわたる。

 

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