ウフフの我が家 2014年

ウフフの我が家

この記事の目次

スウェーデンハウスオーナーのコピーライターが綴る、ひとりごとのような本音エッセイ。

薄着注意報

冬、スウェーデンハウスに住む人には、気を付けなければいけないことがある。それは、うっかり薄着のまま外出しないようにすることだ。「家の中がこのくらいなんだから、外もたいしたことないだろう」と、外気温を確かめもせずに身支度をすると痛い目にあう。かく言う私も引っ越し当初は何度もそれで失敗し、駅までの道のりで激しく後悔...「おかしいでしょ、うちでは暖房もつけてなかったのにっと、スウェーデンハウスに対して身勝手かつお門違いの怒りを感じながら、コンビニでカイロを買ったり、娘に毛糸のパンツを買ってはかせたことがある。

室内で暖房器具を使用するくらいに寒い日ならば用心もするが、スウェーデンハウスに住んでいると、暖房器具を稼働させる期間は比較的短いのだ。なんてったって、高気密・高断熱、魔法瓶のような家なのだから。しかし、最近は私もそれなりに学習し、それなりの策を講じている。まずは、窓から通りを眺め、歩いている人の服装を見る方法。しかし、人通りの少ない住宅地の道路は、待てど暮らせど誰も歩いてこないことが多い。

次は窓を開けて寒さをチェック。が、暖かい室内にいるとこれも判断が難しい。そこで、「お隣さんはどうだろう」という方法を思いついた。我が家は玄関を一歩出ると、隣家との境界に塀が立っている。そしてその向こうにお隣さんちのエアコンの室外機が置いてある。その姿は見えないが、どうやらリビングのエアコンのものらしく、暑い日、寒い日は、朝早くから音を立てて動いている。それをバロメーターの一つにするという作戦だ。玄関を出て室外機のモーター音が聞こえたら、その日は世の中的に「寒い」(夏の場合は「暑い」)のだ。

「あら、もうエアコン?うちはまだいらないなあ。うーん、しあわせだなあ、我が家は...!」と驚いている場合ではなく、自分の身支度を見直すべし、というわけだ。もっともこの方法、お隣さんもスウェーデンハウスだった場合には、ちょっと使えないかもしれないけれど...。

モデルハウスに行ってみよう!!

今号から、「モデルハウスに行ってみよう!!」というコーナーが始まり、面白い企画だなあと思いながら眺めている。スウェーデンハウスを建てる前、モデルハウスにどのくらい行っただろうか...3か所か4か所...もっと行ってみれば良かったなと思う。モデルハウスが教えてくれることは、想像以上に多い。

スウェーデンハウスならではの木のぬくもりや開放感、居心地の良さなどは、どのモデルハウスでも共通だが、想定される家族構成や生活スタイル、間取り、空間の使い方、インテリア、外観などは一棟一棟違う。それぞれに個性があって、その中にたくさんの暮らしのヒントが散りばめられている。人が頭の中でイメージすることには限界がある。「こんなふうにすれば素敵だろう」と考えても、実際に見てみるとそうでもなかったり、絶対ありえないと思っていた素材や色の組み合わせが、実は意外に美しかったり。我が家もモデルハウスを回りながら、「こんなかんじいいな」とか「こういうのもありだね」とか、少しずつ「我が家」のイメージを固めていった。

営業さんも「ロフトを見るならこちら、吹き抜けの感じならあちら」と、ニーズにあったモデルハウスを紹介してくれた。カーテンや壁紙、照明の使い方なども、さすがのコーディネートで魅せてくれるので、気に入ったものは写真に収めた。夫などは、当初「パイン材は節目が好みじゃないから多用したくない」と言っていたのに、あれこれ見て回るうちに、「天井にもパインを貼ろう」と言うまでに、実際の空間を見て変わっていった。「ここは○○モデルハウスのように」という言葉を、打ち合わせの時に何度言っただろう。そして結果、イメージした通りのマイホームができ上がった。うーん、しあわせだなあ、我が家は。

みなさんどんどんモデルハウスに行きましょう。建てる前ならもちろん見なくちゃソン!ソン!そして入居後の方もぜひ。私もこの企画を足掛かりに、ちょっと足を延ばして、小旅行気分で遠出をしてみようかなと思っている。小さな発見やアイデアが、きっと毎日の暮らしをちょこっと「ウフフ」にしてくれるはずだ。

緑の季節に

アウトドアで食べるご飯は美味しい。たとえそれがおにぎり一個でも、一杯のお茶漬けでも、気取ったコース料理でも、だ。なんでもかんでも美味しくなってしまう「お外ごはん」のメカニズムというのはなんなのだろう。陽の光だろうか、風だろうか、空気だろうか...まあ、分析なんてどうでもいい、とにかく、美味しいし、気持ちいい。そう感じるのだから、それでいい。

スウェーデンハウスのウッドデッキが好きだ。ウッドデッキなんて別にスウェーデンハウスでなくても作れる。けれど、スウェーデンハウスのウッドデッキには独特の重厚感というか安心感というか、どっしり構えて揺るがない、まるで大きな木の上にいるような自然との一体感がある。室内でも充分自然を感じられる家ではあるが、その延長にあるこの空間は、更にもう一歩、自然の中に入っていける、小さなアウトドア空間なのだ。家を建てた頃はこのウッドデッキで、毎週末にでも「お外ごはん」を楽しもうと企てていた。が、真夏は暑いし虫も多い。梅雨は雨、冬は寒い...と実際はそんなに実現しない。大きなオーニングをつけたり、蚊取り線香を焚いたり、コートでも着込めばいいのだろうが、そこまでの根性もない。うーん、残念。結局は気候の良い、花見の季節と、お月見の季節くらいになってしまう。

が、しかし、年に数回だとしても、値千金。その数回は、気軽に出られない残念な日々を補って余りある喜びと楽しさを運んでくれる。先日、おやつと宿題を持って、娘がウッドデッキに出て行った。私も後から、自分のティーカップを持ってついていく。「いいな、お母さんは宿題なくて」「子どもの時にすませたから、もういいの」「ふーん」...納得できないような顔をしながら、それでもご機嫌に宿題を始める娘。日差しが温かい。プリントの上におかれたお気に入りのペーパーウェイトが、笑ったような顔になる。うーん、しあわせだなあ、我が家は。

さあ、これからいい季節になる。窓を開けよう、外に出よう、この家はどんどん自然の一部になっていく。深呼吸をして、緑色の季節を楽しもう。

北欧ちらっと旅(前編)

「あ、寒い...」空港に降り立った瞬間にそう思った。日本はうだるような暑さだったのに、さすがは北欧。慌てて薄手の長袖をはおる。長年の夢だった北欧旅行は、フィンランドから始まった。美しく晴れたかと思うと急にどんよりしてきて、雨が降ったり...故郷の山陰地方を思わせる天候に、歓迎はできないにせよ、親しみがわいた。

ヘルシンキはお洒落な街だ。マリメッコ、アーリッカ、アラビア、イッタラ...有名ブランドはもちろん、小さな店に何気なくディスプレイされている雑貨の色使い、店員さんのエプロンの柄にさえ、いちいち感激してしまう。何故だろう?何が違うんだろう?ああ、そうだ、ものすごく「自然」なんだな。木を多く使った雑貨、草木をモチーフにしたデザイン、寄せ植えを見ているような色使い...。長く閉ざされた冬を送る北欧の人たちは、インテリア等に自然を思わせるモチーフを使用して、家にいながら屋外の美しさを思うのだという話を聞いたことがある。これなんだなあと、そして、北欧のような長い冬を過ごすわけでない私たちにとっても、「自然」を思わせるモノというのは、やはり心地よく、身近に感じられるものなのだなあとしみじみ思う。

うん、どの食器だって、雑貨だって、買って帰れば我が家にバッチリ似合うだろう。だって、我が家はスウェーデンハウスなんですもの。うっふっふ。あのキッチンクロスはどうだろう。こっちのストールもいい風合い、クッションカバーもこの際、新調しちゃおうかなー!!うーん、しあわせだなあ、我が家は。

と、いい気になっていたのも束の間。値札を見て愕然とする。なんて物価が高いんだ!まるっきり手がでない。え?こんなに小さいのに?この値段?

――いけない。大量生産、使い捨てに慣れた日本の感覚で見てはいけないのだ。良いものと長く寄り添う生活とは?「物の価値」とは?私はこの旅で改めて考えさせられることになった。「見るだけ」の買い物は、少々淋しいものではあったけれども。

北欧ちらっと旅(後編)

はるかなるものみな青し──そんな詩の一節を思い出す。スウェーデンの空も、海も、湖も、人々の瞳も、なんと美しく、青かったことか。スウェーデンへは船で入ることにした。ストックホルム港に近づくにつれ、話に聞いていた「小さな島々」が見えてくる。フィンランドとは違う、カラリと暑い夏の空気が心地いい。

ストックホルムをひと通り観て回った後、レンタカーで一路南へ。目指すはリンドグレーン(「長くつ下のピッピ」の作者)の生まれた街、ヴィンメルビー!ストックホルムから約6時間、左右に眩いばかりの緑が広がる道を、ボルボで走る。「森と湖の国」を堪能するドライブだった。憧れていたのだ。小4の頃から。

初めてリンドグレーンの物語を読んだ時、どうして私はスウェーデンに生まれなかったのかと、軽い絶望感に襲われた。どうして私の毎日は、ピッピやカッレくんのように冒険に満ちていないのだろうかと。やかまし村に住みたくて、マディケンと友達になりたかった私は、遅ればせながら、やっとこの街に来ることができた。しかも、あの頃の私と同じ年になった娘と一緒に。夢のようだ。大人になって、スウェーデンという国が自分にとってこれほど大切な存在になるなんて、10歳の私には知る由もなかったが、心のどこかでずっと、いつかリンドグレーンが描いたような、温かな暮らしをしたいと願っていた。

スウェーデンハウスに出合い、その暮らし方の哲学を知り、興味が湧くままに文化や政治、思想、芸術等、さまざまなスウェーデン事情に触れることになった。そしてそこから学んだことは、想像以上に多く、大切なことだった。あっと言う間の北欧旅行。日本に帰ったら、やかまし村と同じ色をした、私たちのスウェーデンハウスが待っている。幼い頃、私を夢中にさせたスウェーデンという国の物語は、今、私と、私の家族の物語となって続いている。

ナツムネ・フユムネ

「家の作りやうは、夏をむねとすべし」──ご存知、兼好法師の「徒然草」、第55段である。

この文章の続きはこうだ。「冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり」。早い話が、家を建てるなら夏の快適をまず最優先にして建てるべきだ。冬は寒くてもなんとかなるが、暑いのは耐えられない!というご意見だ。冷暖房の設備のない時代、この言葉は家づくりの際に呪文のように繰り返され、大切にされてきたらしい。

夏の快適が最優先...いやいや、それはどうだろう。私は寒い方が我慢できない。光熱費だって冷房代よりも暖房代の方が高くつく。それに、夏を涼しく過ごすために、日本家屋は通風を重視してきたのだが、日本が熱帯化しつつある昨今、吹き抜けて行く風もまた熱風なり、だ。兼好法師がもしタイムスリップして21世紀にやって来たなら、別の言葉を考えたに違いない。

冬、スウェーデンハウスはとにかく暖かい。愛する我が家を日々誇らしく思える季節だ。「冬を旨」とした家...?いや、夏だってうんと快適だ。今年も我が家はエアコンを効率運転させることで、暑さを難なく乗り切った。早くから暑くなったので、7月中頃からずーっとつけっぱなしだったけれど、電気代はほぼ変わらず(スウェーデンハウスは高気密だから、一旦冷えればエアコンは止まったままだ)。寝苦しいとか、室内熱中症とか、アセモとか、我が家には全く無縁の話。まわりの人がどれだけ「暑くて家にいられない」などと言っていても、心の中で(たまには口に出して)「ごめんね、うちスウェーデンハウスなんで」と返事をしていた。

「夏を旨」とする住宅設計は、今でも、あたかもそれがエコであるかのように推奨されてしまうことが、ままあるようだ。けれど家を持つなら、夏の涼しさだけでなく、冬の暖かさ、春の心地よさ、秋の美しさ...全てを楽しめる家がいい。四季を通して快適に、楽しく暮らせる家がいい。そう、やっぱりスウェーデンハウスがいい...徒然なるままに、兼好法師とゆっくり語ってみたいものである。

幸せの隣へ

「いつもホントにすみません、うるさくないですか?うちの子たち...」と、彼女が聞く。「大丈夫ですよ」と私が答える──隣家の奥さんと、何回そんなやり取りをしただろうか。

私たちがスウェーデンハウスを建ててから8年間、隣の土地はずっと空地だった。が、この度ついに家が建ち、賑やかなご家族が引っ越してきた。子どもは小学生のお兄ちゃんを先頭に3人。それはそれは元気な兄妹だ。放課後にはお友達もやってきて、窓を開けていると、庭から、家の中から、いろんな会話や叫び声、泣き声が聞こえてくる。お母さんが「うるさくないですか?」と気にするのもふむふむ、わかる。先日あまり気にしておられるようなので、ついに言っておくことにした。「うち、スウェーデンハウスなので」

──感じ悪く聞こえなかったか?とドキドキしながら言葉を続ける。「窓を閉めると外の音、あまり聞こえないんです。心配しないでくださいね」と。彼女はほっとしたような顔になり、気のせいだろうか、それからは大人の会話もよく聞こえてくるようになった(窓を開けていると)。庭でBBQをなさる回数も増えたようだ。きっと、ストレスだったに違いない「音問題」から解放されたのだろう。会っても謝られることはなくなった。

窓だけではない。スウェーデンハウスの壁や床に使われている断熱材のグラスウールは、内部に空気をたくさん含んでいるので、吸音性が非常に高い。まさに「家全体で遮音」してくれるのだ。隣家と接近して建つことの多い日本住宅にこそ、やはりスウェーデンハウスだ。

子どもだって、大人だって、大声で笑ったり、泣いたり、怒ったりした方がいい。自分の家にいる時くらい、のびのびと、ストレスをためずに暮らそうよ。住む人だけじゃない、お隣さんまでハッピーにしてくれる、スウェーデンハウスって、やっぱりすごい。

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