掲載号:The SWEDEN HOUSE No.158
冬の温もりスポット
その寝台は、ひと目で「冬にはずっとここに居たいなあ」と思わせる雰囲気があった。木彫りの素朴さと伝統模様のペイントも美しかった。
ダーラナ地方のテルベリという村に滞在した時のことだ。宿泊先は広い敷地の中に昔の民家を何軒も移築して構成されているホテルだった。
時期は夏休み。私は2人の子供(中・高生)と一緒だった。案内された部屋にはベッドが3つあり、そのうちの1つが冒頭の寝台だった。
私達親子は、誰がその寝台に寝るかを毎晩ジャンケンで決めた。どうしてジャンケンにしたのか、今は覚えていない。ただ、3泊もしたのに、私は一回も勝つことが出来なかった。
「いいなあ、いいなあ」と呟いたが、彼らは譲ってくれなかった。それほど魅力的な空間だったのだと思う。
時は経ち、子供達は2人とも巣立って行った。今は、ゆっくりと一人旅を楽しむ身。
今回の絵に描いた寝台は、昨年の秋にマルメ城博物館内で見たもの。
ここは、中世から19世紀くらいまでのスウェーデン人の暮らしで使用された家具や食器類、衣装などが時代別に展示されている。寝台は展示物の中で一番大きなものだった。
ペイントの色合いや模様などが、ジャンケンに勝てなかった寝台ととても良く似ている。
じっと眺めていると、過ぎた日のワンシーンが鮮やかに甦ってきた。
Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。
[ホームページ]www.setsukofukai.com
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