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「森のしあわせ通信」多様性ある社会

この記事の目次

多様性ある社会

近頃耳にする多様性という言葉、それはシンプルに言うとあらゆる性質の人が存在するということです。今日そのことをそれぞれが受け入れ、国籍、性別、年齢、宗教、文化、ハンディキャップなどあらゆる側面で異なる特徴を持つ各人が社会で活躍しながら、双方にそれらの価値観を共有し重ね合わせて、より良い社会を創造する社会形成が求められています。しかし日本においての多様性という概念は未だ本質を捉えるところまでたどり着いてはおらず、あくまで女性の社会進出や主婦や高齢者の再活躍などといった多様性の極々一部にすぎません。このように先進国である日本が多様性の理解において遅れをとっている要因に日本が島国であることや移民政策、教育方針などが関係していると考えられます。

スウェーデンをはじめとする北欧は世界に先駆けてこの多様性ある社会を目指し歩んできました。家族のあり方一つとっても大変に多様です。ジェンダーフリーであり男性同士、女性同士の結婚は法律で認められており、例えばお父さんとお父さんと子供という家庭は普通に社会に受け入れられています。企業の雇用活動においても同様でメンバーの経歴、民族性、年齢、そして特に性別の観点から組織のバランスをとるために絶えず取り組むことが重要であるとされています。この背景には実はスウェーデンが移民大国であることが紐づいています。

2017年1月、初めてスウェーデンの人口が1,000万人を超えました。これは昨今大きく取り上げられている移民受け入れが大きく影響しています。現在スウェーデン国内居住者の4分の1(24.9%)が海外から移住または移民である背景を持っており、彼らは海外で生まれたか、海外で生まれた両親がスウェーデンに移り住み、その後にスウェーデンで生まれた人々です。両親どちらか1人が海外で生まれた人を考慮するとその対象者はスウェーデン国内居住者の3分の1(32.3%)にも及びます。

しかしこのような状況は今に始まったことではありません。移民が著しく増加したのは第二次世界大戦の時でした。当時もっとも多かった移民の国籍はドイツ、そしてデンマークとノルウェーのスカンジナビア人でした。エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国からも多くの人々がスウェーデンに移り、一時避難をしていた約7万人のフィンランド人の子供たちのうち約1万5千人がスウェーデンに残り、デンマークに住んでいたユダヤ人7千人のほとんどがそのままスウェーデンに留まりました。その結果、スウェーデンは過去70年間で民族的、宗教的、言語的に多様化した社会を育むこととなりました。

スウェーデンの多様性のもう一つの理由、それは一見全く異なる次元のようでありますが、スウェーデンの自然がなす独自性からも紐解くことができます。スウェーデンは多くの森や資源を有するヨーロッパで5番目に大きな土地を持つ国です。故にスウェーデン人は、美しい大自然の近くで生きることに喜びを感じています。そして自然の豊かさと厳しさを知っています。スウェーデンには自然享受権(Allemansrätten)という独自の法律があり、誰もが自然を自由に楽しむことができますが、それは同時に自然を常に保護しなければならないという責任が生じることを意味しています。そのためスウェーデンでは昔から子供たちへのアウトドア教育を積極的に行ってきました。自由に自然を謳歌できることに感謝をし、子供たちは自然について知るのです。そして最も重要なこと、自然に敬意を払うことを学びます。このようにスウェーデンでは最大限の尊敬をもって自然と向き合い森林を利用しています。自然も人間もお互いが幸せである必要があること、つまりこの教育はあらゆるものが皆平等であることをも伝えています。この独自性がスウェーデンの様々なシーンで見受けられるのです。

例えばものを生産する場合、自然や環境の保護はもちろん、製品が誕生するまでのプロセスに関わる全ての人が平等であるべきだと考えられています。その平等精神は、誰もが意見できることをも意味しており、最高の品質に到達させるためには性別、年齢、職種や立場、国籍や人種などに関わらず、関係する全ての人の知恵が必要だということです。マイノリティもマジョリティも互いを受容し尊重しアイディアを上乗せすることで、結果イノベーションにも繋がっているというわけなのです。

main_002_sweden24異なる背景を持った子供がクラスにいる場合、その異なる文化をクラスのみんなで学びます
Photo:Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

多様な働き方

多様性ある社会は決して人に対する性質だけを指すわけではありません。昨今の状況下、暮らし方や働き方にも変化が生まれています。都心に住む必要がなくなり、家賃や物価が安く自然豊かな田舎暮らしをしながらこれまでと同様の仕事をする人も出てきました。今まで通りオフィスに出勤して仕事をする人、自宅で在宅勤務を行う人、サテライトオフィス、シェアオフィスで、はたまたノマドワーカーと呼ばれる固定の場所を持たずに仕事をする人まで様々で、副業を容認する企業も増加しています。より多様な社会となり、個人個人が自分を見つめ直しどうありたいかを模索して、それぞれにあった生き方を選択できる時代に突入し始めています。一人ひとりが自立をして自分で考え責任を持って前に進む時代が日本にも訪れているのではないでしょうか。スウェーデンから学ぶことがまだまだたくさんありそうです。

main_003_sweden24 建設関連のエンジニアに女性の姿をみることも少なくありません
Photo:Cecilia Larsson Lantz/Imagebank.sweden.se

main_004_sweden24父親が育児休暇を取ることは一般的で社会でも認知されています
Photo:Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se

main_005_sweden24 テクノロジーの発展にともない多様な働き方や学び方が浸透しています
Photo:Susanne Walström/imagebank.sweden.se

main_006_sweden242006年、スウェーデン政府は多様性の保護と促進に関するユネスコ条約に調印しました
Photo:Ulf Grünbaum/Imagebank.sweden.se

 


writer_photo堀 紋⼦:北欧ジャーナリスト&コーディネーター

10代でスウェーデンに渡り、ガラスのテクニックとデザインを習得後、ストックホルムで活躍するガラス作家に師事。帰国後、創作活動の傍ら北欧の⽂化イベントを企画開催。その後北欧情報誌の現地コーディネートやプランニングに携わる。現在は独⽴し東京とパリにオフィスを持ちながら、ヨーロッパの暮らしや料理の提案、執筆、現地コーディネート、北欧企業のビジネスサポート、PRを⼿がけるなど活動の幅は多岐にわたる。

 

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