ミュークの扉:Utspring[ウートゥスプリング]

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スウェーデン語【バネ・外に走り出る】
18歳になると、スウェーデンでは成人の仲間入り。6月に行われる高校の卒業式は、日本の成人式と同様に、明るいお祝いムードに包まれます。卒業式はutspring (ウートゥスプリング:外に走り出る)と呼ばれ、社会へ飛び込んでいく第一歩。「独り立ち」への喜びと大人になる緊張感を胸に、卒業生たちはお祭り騒ぎで街を凱旋します。

掲載号:The SWEDEN HOUSE No.188

大人になるまで

スウェーデンで子育てをした友人が、息子さんの高校の卒業式のことを話してくれた。親は式には参加せず、子どもたちが一斉に外へ駆け出してくるのを待つのだそうだ。

高校の卒業は、スウェーデンでは成人するということを意味し、多くが自宅を出て自活を始める。大学に進む者、旅に出る者…皆、それぞれに自分なりの一歩を踏み出すのだ。解放感と不安の入り混じった顔つきで駆け出してくる子どもたちを、親たちは目を細めて見守る。

スウェーデンの保育園では先生がよく「あなたはどうしたいの?」「何が好きなの?」と問うそうだ。幼い頃から一個人として、自主性や個性を尊重し、「自分らしさ」を育んでいく。もちろん、何でも好き勝手にさせるわけではない。ダメなことはダメだと伝え、その理由は丁寧に話して聞かせる。


そうやって大きくなる子どもたちの、部屋を覗くのは面白い。壁の絵、カーテンの柄、思い出の黄色いトラック、大好きなギター…やがて来る巣立ちの日まで、彼らはそこで「自分らしさ」を確かなものにしていく。

親は、口出しをしない代わりに、日々抱きしめ、「愛している」と言葉にする。離れて暮らすようになっても、電話を切る時には「Kram kram!」( ハグを! ) と抱きしめてくれる。巣立つ場所が温かいほど、子どもたちは遠くまで飛んでいける。

「子育てというよりも、親子関係をつくっていくという感じだった」と、その友人は言う。大人になるまでのほんのひと時、その子らしさが輝くように、胸を張って飛び出していけるように、見守り、抱きしめ、ともに成長していきたい。

 

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