住宅ローンの金利上昇でも慌てない!知っておきたい変動金利のルール

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日銀の政策転換により、長く続いた“金利のない時代”が終わりを迎えました。住宅ローンの金利も上がり始め、これから家を買おうとしていたり、すでに変動金利でローンを組んでいる方は、「返済額がどれくらい上がるのか…」「急に家計が苦しくなるのでは…」と不安を抱いているかもしれません。そこで知っておきたいのが、変動金利のルールです!果たしてどんなルールなのか、考え方と共に詳しくご説明しましょう。ちゃんと理解しておけば、安心して住宅ローンと向き合えるはずですよ。

住宅ローンの変動金利に備える「2つのルール」とは?

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変動金利型の住宅ローンは、金利の変動によって半年ごとに適用金利が見直されます。しかし、実際に「毎月の返済額」が変わるのは、5年に1回と決まっているのをご存じでしょうか?さらに、たとえ金利が上がっても月々の返済額が急激に上がらないよう、「125%ルール」という上限の仕組みが設けられているんです!この2つのルールがあることで、変動金利でもある程度の返済計画が立てやすくなっています。しかし、実際には注意しなければならないことも…。それぞれのルールについて、詳しく見ていきましょう。

 

「5年ルール」とは?

5年ルールとは、住宅ローンの毎月返済額の見直しが、5年間は行われないというもの。変動金利は半年ごとに金利が見直されますが、返済額自体は5年間一定に保たれる仕組みになっているのです。これにより、急な家計の変動を防げるようになっています。例えば、変動金利型のローンで35年返済、元利均等返済で4,000万円を年利1%で借りていたとしましょう。毎月の返済額は112,914円となり、初月の返済額の内訳は下記のようになります。

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では、仮に3年が経過した37か月目に、金利が1%上昇して2%になったらどうなるでしょう?
この場合、それぞれの金額は以下のように変わります。 

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36か月目と37か月目を比較してみると、返済額自体は変わっていません。しかし、内訳を見ると元金が減り、利息が増えていることがわかりますね。このとき、元金の返済額が少なくなりますので、ローン残高もその分しか減らないということになります。そして、5年後に改めて月々の返済額が見直され、61か月目に上昇しているのがわかるでしょう。このとき、返済額の急激な増加に繋がるのでは?と思われる方がいるかもしれませんが、そうした場合には「125%ルール」が適用されます。

 

「125%ルール」とは?

125%ルールとは、5年ごとに返済額が見直される際、返済額の上昇幅は直前の返済額の1.25倍までとするというもの。このルールも、急激な返済負担の増加を防ぐための制度です。先ほどの試算では、当初3年間は1%で、その後2%に上昇した場合で試算しました。同じ例で、10年経過後に5%まで金利が上昇した場合を見てみましょう。実際には、いきなり2%から5%に上がる状況は考え難いかもしれませんが、分かりやすいよう例示しますね。

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仮に10年経過して5%まで金利が上昇した場合、返済額は120か月目の132,482円から比べ、1.25倍となる165,602円となっています。もし121か月目から5%に上昇するのであれば、120か月目の残高から計算すると、本来なら返済額は18万円以上になってしまいます。しかし、125%ルールがあるため、これが1.25倍の165,602円に抑えられているわけですね。ただし、ここで注意したいポイントが!返済額の内訳を見ると利息が130,235円、元金が35,367円です。多くを利息が占めているため、あまり元本の返済に充てられなくなってしまっています。

5年ルール&125%ルールのメリット

5年ルールと125%ルールについて、それぞれメリットをまとめると以下の2点になります。

● 5年ルールは、金利が上昇してもすぐに返済額が変わらない
● 125%ルールは急激な返済額の増加を抑えられる

これらのルールによって、返済額がすぐに変動しない、急激に返済額が増えない仕組みになっています。そのため、金利が上がっても安心だ…とおもうかもしれませんが、ちょっと待ってください!注意すべき点もあるので、次で確認しておきましょう。

5年ルール&125%ルールの注意点

5年ルールと125%ルールには、以下のような注意点があります。

● 金利上昇時に元本の返済が遅れる
● 金利が上がり過ぎると未払い利息が発生する可能性もある
● 元金均等返済ではルールが適応されない
● ネット系の金融機関ではルールが適応されない場合がある

このような可能性を考えると、変動金利を選択するなら、できるだけ以下のような備えも考えておきたいですね。

● 金利が上昇することを想定しながら返済計画を立てる
● 金利上昇に対応できるよう繰り上げ返済資金を準備しておく
● 返済中の金利の動向に注意する

金利上昇時に利払いが大きくなってしまった場合、繰り上げ返済することで利払いを抑えることもできます。そのため、金利上昇時の備えとして、繰り上げ返済の資金も準備しておけると安心ですね。
不安な方は、長期固定金利等への借換えや条件変更も選択肢の一つになります。ただし、一般的には変動金利よりも、固定金利の方が金利は高く設定されているものです。さらに、借換えに掛かる諸費用分を負担しなければならず、返済額が増えてしまうことになるかも…。十分に注意して検討しましょう!

元利均等返済と元金均等返済

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住宅ローンの返済方式には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。変動金利のルールと共に、こちらもあらかじめ理解しておきましょう。

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住宅ローンは、元利均等返済の方が一般的です。そのため、元金均等返済は知らなかった…という方がいるかもしれません。いずれも一長一短がありますので、それぞれ特徴を踏まえて、自分に合った方を選んでくださいね。

まとめ:金利が上昇しても大丈夫な家計を創る

住宅ローンの変動金利に関する「5年ルール」「125%ルール」について、詳しくご紹介しました。市場金利が上がったからといって、すぐに返済の負担が増えるわけではありません。しかし、たとえ金利が上がらなくても、毎月の返済にあまりゆとりを持てていない…という状況なら危険信号!早めに家計の見直しを行いましょう。住宅ローンは長期にわたる契約です。仕組みを正しく理解し、自分自身の家計と照らし合わせながら、適切に対処していくことが大切ですよ。もしも将来に不安を感じたら、住宅ローンや家計の見直しを検討してみてください。万が一の備えとして繰り上げ返済の資金づくりも行いながら、賢く住宅ローンと付き合っていきましょう!

 

[筆者プロフィール]

プロフィール_小川小川 洋平

CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。経営者を中心に、財務戦略や資産形成のサポートを行う独立系FP。住宅購入相談も得意とし、自らもマイホーム購入を経験。自身が学んだ建築や家づくりの知識を活かしながら顧客にローンや補助金、住宅性能等についてもアドバイスしている。複数の工務店とのネットワークも築き、住宅購入に関わる資金計画・税金対策・ローン設計から、購入後の資産形成まで一貫したアドバイスを行い、住まいとお金、両方の視点から“後悔しない選択”を支援している。FPオフィスclientsbenefit代表FP。

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