住宅ローンには、変動金利と固定金利があります。金利タイプの選択によっては、総返済額に数百万円単位の差が生じる可能性もあります。そのため、それぞれの特徴を正しく理解し、自分のライフプランや資金計画に合った選択をすることが大切です。この記事では、変動金利と固定金利の基本的な違い、それぞれに向いている人の特徴などを解説します。
変動金利と固定金利の基本的な違い
まずは「変動金利」と「固定金利」について、特徴や注意点を詳しく見ていきましょう。
変動金利の特徴と注意点

変動金利は、市場金利の動向に応じて金利が見直されます。日本銀行の政策金利や短期プライムレート(銀行が優良企業に貸し出す際の最優遇金利)に連動して金利が変わるため、経済情勢の影響を受けます。
固定金利より金利が低め
変動金利の大きな特徴は、借入当初の金利が固定金利より低く設定されていることです。金利が低いほど毎月の返済額も小さくなるため、同じ借入額でも初期の返済負担を抑えやすくなります。
たとえば、5,000万円を35年返済で借りた場合の毎月返済額は、金利の違いによって次のように変わります。
<返済例>
・変動金利 0.5%の場合:月々 約13万円
・固定金利 1.5%の場合:月々 約15万円台
このように、変動金利は固定金利と比べて返済開始時の負担を抑えられる点が特徴です。
将来的に金利が上がる可能性がある
変動金利はインフレ圧力や為替動向など、さまざまな要因によって金利が上昇する可能性がある点に注意してください。金利が上昇すれば、返済額も増加します。ただし、急激な負担増を防ぐために、「5年ルール」と「125%ルール」という緩和措置があります。
「5年ルール」と「125%ルール」 ● 5年ルール:返済額の見直しを5年ごとに行う ● 125%ルール:見直し後の返済額を従前の125%以内に抑える
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これらのルールは、返済額の急増を防ぐ制度です。しかし、金利上昇分の返済が追いつかない場合は未払い利息が発生し、返済期間の延長や最終回の返済額が増加する可能性があります。
固定金利の特徴と注意点

固定金利は、契約時に決めた金利が続くタイプです。全期間固定型なら借入期間中ずっと同じ金利が適用され、期間選択固定型なら「2年」「5年」など、選択した期間だけ金利が固定されます。
金利上昇のリスクを避けられる
固定金利のメリットは、市場金利がどれだけ上昇しても、契約時の金利が維持されることです。特に全期間固定型なら、35年間ずっと同じ金利で返済を続けられます。インフレ懸念がある時期には、長期的に見ると有利になるかもしれません。
返済計画を立てやすい
毎月の返済額が一定の固定金利には、長期的な家計管理がしやすいメリットがあります。将来にわたって住居費が予測しやすい点は、安心材料となります。子どもの教育費や老後資金など、将来必要になる資金を計画的に用意できるでしょう。
変動金利より金利水準が高い傾向がある
固定金利は、変動金利と比べて金利水準が高く設定される傾向があります。金融機関は返済期間中の金利変動リスクを負い、その分を金利に上乗せしているためです。その結果、同じ借入額でも毎月の返済額や総返済額が変動金利より大きくなる場合があります。
先ほどの返済例でも示したように、固定金利1.5%と変動金利0.5%では、月々の返済額に約2万円の差があります。この差額分を繰り上げ返済に回せば、変動金利のほうが早く完済できる可能性もあります。
途中で金利が下がっても恩恵が受けられない
固定金利の場合、たとえば金利2%で借りた後に市場金利が1%まで下がっても、そのまま2%分の利息を払い続けることになります。借り換えという選択肢もありますが、諸費用として数十万円から100万円程度かかるケースが一般的です。金利差が小さいと逆に損してしまう可能性があるため、固定金利を選ぶ際は、今後の金利動向も慎重に検討してください。
全期間固定型と固定期間選択型 全期間固定型: 借入期間中、金利が一切変わらないタイプ。フラット35※が代表例で、最長35年間金利が固定される。
固定期間選択型: 一定期間だけ金利を固定し、期間終了後に金利タイプを選び直すタイプ。たとえば10年固定の場合、当初10年間は金利が固定され、その後は変動型か再度固定型を選択する。
※「フラット35」には当初5年間、子ども1人あたり年0.25%の金利優遇が受けられる「【フラット35】子育てプラス」などの制度があります。なお、家族構成や住宅性能などによって金利優遇の内容は異なります。
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シミュレーション例
固定金利と変動金利の違いを、ここでは借入額5,000万円・35年返済の場合を例として比較してみましょう。

一見すると、変動金利のほうが返済額を抑えられています。しかし、こちらのシミュレーションでは分かりやすく比較できるよう、変動金利が返済期間中ずっと同じ金利で推移する前提で計算しています。実際には借入期間中に金利が上昇する可能性があるため、単純な比較はできない点に注意してください。
どちらを選ぶべき?向いている人の違い
変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、自分の収入状況やライフプラン、リスク許容度から総合的に判断することが大切です。
変動金利が向いている人
変動金利は、金利上昇リスクに柔軟に対応できる人に適しています。以下のような人なら、メリットを感じやすいでしょう。
● 将来金利が上がっても対応できる資金余力がある人
● 預貯金や投資資産を十分に持っている人
● 短期間で繰上げ返済する予定がある人
具体的には、世帯年収が高い人、十分な金融資産を持っている人が該当します。
また、借入期間中に繰り上げ返済を予定している人も、変動金利のメリットを活用しやすいでしょう。積極的に繰り上げ返済を行うことで元本が早く減り、仮に将来金利が上昇しても、その影響を抑えることができます。
固定金利が向いている人
続いて、固定金利が向いている人の特徴を解説します。
● 安定した返済を重視する人
● 長期的に安心して返済を続けたい人
● 金利上昇のリスクを避けたい人
固定金利は将来にわたって支出を予測できるため、資産推移のシミュレーションを立てやすいという利点があります。金利の変動に不安を感じる方には、固定金利のほうが安心して利用できます。今後の適用金利が上昇する可能性を見越して、「今の低金利を固定しておきたい」と考えるのも選択肢の一つです。
期間選択固定型(10年固定など)は全期間固定より金利が低く、一定期間後に金利タイプを見直せる柔軟性があります。たとえば、子どもが独立するまでの期間だけ固定金利にして、その後は変動金利に切り替えるという方法も考えられます。
変動+固定を組み合わせたミックスローン
ミックスローンとは、一つの住宅購入に対して、変動金利と固定金利を組み合わせて借り入れる方法です。たとえば、5,000万円の借入額のうち2,500万円を変動金利、残り2,500万円を固定金利で借りるといった具合に、複数の金利タイプを併用します。
ミックスローンのメリットと注意点
ミックスローンは、変動金利と固定金利の「いいとこ取り」ができる魅力的な選択肢です。ただし、独自の注意点もありますので、メリットと併せて正しく理解したうえで、自分に合っているか判断してください。
金利変動リスクを軽減できる
ミックスローンのメリットは、金利上昇リスクを部分的に回避できることです。全額を変動金利で借りた場合と比べ、金利上昇時の返済額増加を半分程度に抑えられます。
将来のライフプランに合わせた返済計画が立てられる
ミックスローンなら、ライフステージに応じた柔軟な返済計画を立てやすい特徴があります。たとえば、教育費がかかる期間は固定金利部分を多めにして支出を安定させ、子どもが独立した後は変動金利部分を繰り上げ返済で減らすという計画が可能です。
諸経費が増える
ミックスローンは2本のローン契約となるため、諸経費が増加します。事務手数料や抵当権設定費用などがそれぞれの契約に発生するため、コスト負担が重くなる点に注意してください。合計すると、通常のローンより10万円~20万円ほど多くかかる可能性があります。
また、返済管理が複雑になる可能性があるため、その点にも注意が必要です。2本のローンそれぞれの残高や金利、返済額を把握し、住宅ローン控除の申請も2本分で行うことになります。
まとめ
変動金利と固定金利、あるいはミックスローンには、それぞれメリットと注意点があります。住宅ローンの金利を選択する際に重要なのは、複数のシナリオでシミュレーションを行い、家計の安定性と返済計画の実現可能性を判断することです。自分の収入や支出、ライフプランを冷静に分析し、無理のない返済計画を立てましょう。
[筆者プロフィール]
柴田 充輝
保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅建士/社会保険労務士/行政書士
プロフィール文:厚生労働省や不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産取引の実務を担当。 1級ファイナンシャル・プランニング技能士や宅建士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。現在はWebライターとして金融・不動産系の記事を中心に執筆しており、1,200記事以上の執筆実績がある。