建ち並んでいる住宅を見ると、屋根の形が多様であることがわかります。屋根にはいくつもの種類があり、その中のひとつが「寄棟屋根(よせむねやね)」です。
屋根に種類があるのは、それぞれにメリットがあるからです。そこで、本記事では寄棟屋根がどのような屋根なのか、メリットや注意点とともに解説します。住宅を設計する前に寄棟屋根の特徴を確認しておきましょう。
寄棟屋根って、どんな屋根?
「寄棟屋根」は四方に向かって傾斜した屋根で、大棟(おおむね)がある屋根です。大棟とは、屋根の頭頂部にある斜面と斜面をつなぐ部分のこと。頭頂部に大棟がなく、屋根が尖っているのは、寄棟屋根ではなく「方形屋根(ほうぎょうやね)」です。
寄棟屋根は屋根の頂点にある「大棟」から、四方に向かって斜めに下る「隅棟(すみむね)」「下り棟(くだりむね)」が特徴です。日本では三角屋根である切妻屋根の次に、多くの建築で用いられている屋根の種類です。
寄棟屋根のメリット

寄棟屋根には、主に以下のようなメリットがあります。
● 外壁や窓が劣化しにくい
● 耐風性が高い
● 高さ制限がある際にも建てやすい
● 落ち着いた印象の家になる
それぞれ、詳しく解説します。
外壁や窓が劣化しにくい
外壁や窓に雨や紫外線が当たると汚れや劣化で、メンテナンスのタイミングが早まってしまいます。しかし、寄棟屋根は全ての面に軒があるデザインのため、雨や紫外線が当たりにくく、美しい外観を保ちやすくなります。
耐風性が高い
寄棟屋根は四方向に傾斜があり、どの方向から風が吹いても受け流す構造で、建物の耐風性が高いのが特徴です。一般的に、建物の高い位置ほど風圧は強くなるため、屋根が風を受け流しやすくなるほど建物自体の損傷を抑えられます。
高さ制限がある際にも建てやすい
寄棟は、斜線制限(高さ制限)が厳しい立地でも対応しやすい屋根形状です。住宅を建てる際は用途地域や立地条件に応じて道路斜線制限や隣地斜線制限をクリアしなければなりません。
寄棟屋根は四方向に傾斜があるため、建物の向きを勾配に合わせやすく、制限にも対応しやすい形状です。
落ち着いた印象の家になる
寄棟屋根には、重厚感や安定感があります。どの方向からでもバランスの取れた、どっしりとした雰囲気を醸し出し、家が落ち着いた印象になります。
寄棟屋根と聞くと、古風な和風住宅を思い浮かべる方がいるかもしれません。しかし、実際には洋風住宅にも採用されており、デザインの親和性が高い屋根です。瓦の色を変えたり、瓦からスレートに変更したりするだけでも、住宅の外観の印象がガラリッと変わります。
寄棟屋根の注意点
寄棟屋根を採用する場合には、あらかじめ以下のような点に注意しておきましょう。
● 建築コストが割高になる傾向がある
● 太陽光パネルの設置条件に注意が必要
それぞれ、詳しく解説します。
建築コストが割高になる傾向がある
寄棟屋根は屋根面積が比較的大きく、瓦や雨どいなど多くの屋根材が必要です。また、棟(むね)が数ヵ所あるなど少し複雑な構造のため、建築に時間が掛かります。こうした背景から、寄棟屋根は他の種類の屋根と比べて建築コストが高くなる傾向にあります。
ただし、寄棟屋根は外壁や窓が劣化しにくいほか、雨水の侵入の防止にも役立ちます。建物の耐久力が高くなるため、結果的に家全体のメンテナンスコストは下がる可能性があります。
太陽光パネルの設置条件に注意が必要
太陽光パネルは発電量を最大化するために、太陽光の照射効率の良い方向に設置されます。照射効率の良い方向に傾斜していなければ、発電量が低下する可能性があります。そして、太陽光パネルの発電量を上げるには、多くのパネルを設置する必要があります。
しかし、寄棟屋根は四面に分かれて傾斜しているため、照射効率の良い方向に設置できるパネルの枚数が限られます。寄棟屋根で太陽光パネルの設置を検討される場合は、ハウスメーカー等にあらかじめ発電量の予測を出してもらいましょう。事前に発電量や売電収入が分かっていれば、予想と現実のギャップが小さくなるはずです。
その他の代表的な屋根の種類

屋根には寄棟屋根の他にも、以下のようにいくつか種類があります。

屋根の種類によって、見た目や性能、予算が異なります。特徴を踏まえて、理想に適したものを選ぶことが大切です。
とはいえ、すべての屋根の種類と特徴を把握するのは、なかなか難しいでしょう。屋根選びに迷ったら、ハウスメーカーに相談しながら家づくりを進めてください。
まとめ
四方に傾斜しており大棟を持つ寄棟屋根は、耐風性に優れるほか、雨や紫外線などによる建物の劣化を抑えてくれます。また、屋根全体が自然に低くおさまる形状のため、高さ制限があっても対応しやすいのが特徴です。重厚感と安定感のある外観が叶い、和風・洋風どちらの住宅デザインにもなじむため、以下のような方におすすめです。
● 高さ制限が厳しい立地に建築したい方
● 台風の多い地域で建築したい方
● 落ち着いたデザインの家を建築したい方
もちろんスウェーデンハウスでも、寄棟屋根のご提案が可能です。屋根の種類で迷っている方、寄棟屋根に興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
[筆者プロフィール]
八木 友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などを行う。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。