住宅を購入・新築する方の多くが住宅ローンを利用します。ただし、申し込みから借り入れまでにはいくつもの手続きがあり、融資実行までは時間がかかります。また、住宅ローンの審査に通らなければ、一括で現金購入できない限りマイホームを購入できません。
住宅ローンの流れや注意点を事前に知っておけば、手続きをスムーズに進められ、審査にも通りやすくなります。夢のマイホームを手に入れるためにも、住宅ローンについてしっかり理解しておきましょう。ハウスメーカーや不動産会社などに相談しながら進めると、必要に応じた助言を受けられるので安心です。また、提携ローンを利用すれば、金利の優遇や手続き面でのサポートを受けられるなどのメリットもあります。
本記事では、住宅ローンの全体的な流れや申込時の注意点について解説します。
住宅ローンの全体的な流れ
住宅ローンの借り入れは、一般的に以下のような流れで進められます。
① 金融機関への相談
② 仮審査
③ 仮審査の承認
④ 本審査
⑤ 本審査の承認
⑥ 契約手続き
⑦ 融資実行
融資実行までの手続きには、1カ月半から2カ月程度かかるのが一般的です。すぐに住宅ローンを利用できるわけではないので、あらかじめ注意してください。入居希望日から逆算して、しっかりスケジュール管理しながら進めることが大切です。各ステップについて、詳しくは次章から解説します。
金融機関への相談

ハウスメーカーや物件を探すときは、事前に住宅ローンについて金融機関に相談します。なぜなら、住宅ローンの借り入れが可能なのか、どれくらいの金額が借りられるのかを教えてもらえるためです。これは審査ではないため大まかな目安ですが、物件を探すうえでの参考になるでしょう。
金融機関に相談する際には、収入や他社からの借入状況が分かる書類を持参します。これらの書類があることで、金融機関からより適切なアドバイスを受けやすくなります。
どの金融機関に相談すればよいか分からない場合は、不動産会社やハウスメーカーと金融機関が提供している提携ローンを紹介してもらうのも一つの方法です。提携ローンは審査が早い傾向にあり、通常より低い金利で融資してくれる可能性もあるため、借入希望者にとって大きなメリットがあります。
審査の申し込みと承認
ハウスメーカーや物件の候補が見つかったら、住宅ローンの仮審査に申し込みます。仮審査を通過すれば、売買契約を進められるケースが多いです。
仮審査
仮審査は、「購入検討段階の土地、建物」を対象として行われます。仮審査は主に借入者の属性をチェックすることが目的なので、実際に購入予定の物件でなくても可能です。そのため、金融機関への相談時に仮審査の承認を得る方も少なくありません。
仮審査では借入者の収入や勤続年数、他社借入などを確認し、融資の可否や金額を判断します。借入者の審査は1週間程度で結果が出るでしょう。なお、仮審査では以下のような書類が必要です。
● 直近1年分の源泉徴収票(給与所得者の場合)
● 過去3年分の確定申告書と決算書(自営業者の場合)
● 健康保険証
● 本人確認資料
● 他社借入の残高と返済金額が確認できる書類
● 認印 など
源泉徴収票がない場合は、直近3カ月分の給与明細でも代用できる場合があります。3カ月の間にボーナスを受け取っていれば、ボーナスの明細も用意しましょう。また、他社借入の残高は借入先から送付される残高証明書、返済額は返済に使用している金融機関の通帳で証明できます。
本審査
本審査では事前審査の審査内容に加え、物件の詳細な調査や団体信用生命保険の審査が行われます。金融機関によっては物件に直接審査員が向かい、現地調査するケースもあります。総合的に調査するため、1~3週間程度かかることが一般的です。また、収入以外の面も審査することから、たとえ仮審査に通過していても本審査で融資が認められない場合があります。
本審査では以下の書類が必要です。
● 事前審査に必要な書類一式
● 家族全員の続柄の記載がある住民票
● 売買契約書・重要事項説明書・工事請負契約書
● 印鑑証明書
● 納税証明書
● 物件の確認資料(登記簿や公図、設計図など)
● 実印 など
住民票や印鑑証明は、取得日から一定期間内のものが求められます。期間は金融機関によって異なりますが、一般的には取得から3カ月以内の書類が有効とされています。
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PICK UP! つなぎ融資
注文住宅を新築する場合、住宅ローンに加えてつなぎ融資を利用するケースがあります。つなぎ融資とは、着工金や中間金の支払いに対応できる融資のこと。原則として、住宅ローンは土地購入時と建物完成時に一括して融資されます。注文住宅の着工金や中間金の支払い時には住宅ローンが実行されないため、つなぎ融資を利用して各支払いに対応するのです。つなぎ融資は大手ハウスメーカーや一部の金融機関が実施しており、本審査に通過した時点で実行可能になります。
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契約手続き
売買契約や工事請負契約を締結したら、金融機関と金銭消費貸借契約を結びます。金銭消費貸借契約は資金を借り入れ、その返済を約束する契約のことです。契約時には、以下の書類が必要になります。
● 印鑑証明書
● 住民票
● 本人確認資料
● 健康保険証
● 実印
● 収入印紙 など
印鑑証明書や住民票は本審査と同様に、取得日から一定期間内のものが必要です。一般的に、印鑑証明書と住民票は2通ずつ用意します。
また、収入印紙は借入予定額に応じた金額分を用意します。金銭消費貸借契約で使用する収入印紙は高額になるため、郵便局や法務局で購入しましょう。収入印紙はコンビニでも購入できますが、高額な収入印紙は取り扱っていない場合がありますので注意が必要です。
融資実行
金融機関と金銭消費貸借契約を締結したら、一定期間後に融資実行が可能となります。契約から融資実行までの期間は金融機関によって異なりますが、3~7日程度を空けなければなりません。そして、融資実行の際には以下の書類を用意します。
● 印鑑証明書
● 住民票
● 本人確認資料
● 健康保険証
● 実印
● 融資振込先の通帳と届出印 など
印鑑証明書や住民票も、取得日から一定期間内のものが必要です。ただし、本申込から融資実行までは3カ月もかからないため、本申込の直前に融資実行分までの書類をすべて取得しておくと良いでしょう。
融資実行は建物完成日や引渡し日など、契約内容に応じたスケジュールで実施されます。書類に漏れがあると引渡しできなくなるため、不足がないか何度も確認しておくことが大切です。
住宅ローン審査の注意点

住宅ローンの審査は厳しく、必ずしも通るとは限りません。以下の注意点を理解してから申し込み、少しでも通過する可能性を高めておきましょう。
● クレジットカードの保有数
● 携帯電話の支払い遅延
● 自動車ローンの借り入れの有無
● キャッシング・カードローンの有無
ローンの返済やクレジットカードの支払い延滞以外にも、審査が厳しくなる要素があります。以下で詳しく解説するので、事前にご確認ください。
クレジットカードの保有数
キャッシング機能が付いたクレジットカードを多く保有していると、審査に悪影響を及ぼします。クレジットカードの中には、カードローンと同様にお金を借りられる機能の備わったものがあります。借入枠が残っていればいつでも借り入れが可能なため、たとえキャッシングを利用していなくても、住宅ローンの返済に悪影響が出ると判断されることがあるのです。「年会費無料だから」などと発行して放置しているクレジットカードが複数あれば、審査前に解約しておくことをおすすめします。
携帯電話の支払い遅延
携帯電話の本体代金を割賦払いにしている場合、支払いを延滞すると審査に影響する可能性があります。携帯電話の割賦払いは、個人のローンやクレジットに関する信用情報に記録される項目です。金融機関は住宅ローンの審査時に信用情報を調査しており、延滞や不払いの記録があれば審査に影響することがあります。
自動車ローン
自動車ローンの月々返済額が多いと、住宅ローンの審査に影響することがあります。なぜなら、住宅ローンの返済比率を計算するとき、自動車ローンの返済額も上乗せされるためです。この返済比率とは、年収に対してローンの返済額が占める割合のことで、返済比率の割合が高くなると、住宅ローンの審査に不利になることがあります。
自動車ローンの借入額は住宅より少ないものの、返済期間が短期間であり、月々の支払額が大きくなりがちです。そのため、自動車ローンを借りていると返済比率が急上昇し、審査に悪影響を与える可能性があります。自動車ローンを一括返済できるなら、住宅ローンの仮審査前に終えておきましょう。
キャッシング、カードローン
複数のカードローンを利用していたり、高額なキャッシング枠を保有していたりすると、審査に通りにくくなります。返済中でも多額の借り入れが可能なため、たとえ審査前に借入がなくても、影響を受ける可能性があります。カードローンのキャッシング枠は信用情報を調査すれば確認できるため、仮審査前の解約がおすすめです。
審査に通らなかったら?
もし住宅ローンの審査に通らなかった場合でも、別の金融機関で再度審査を受けられます。金融機関によって審査内容は異なるので、再申込先で住宅ローンを借りられる可能性があります。
ただし、審査の結果が出るまでには時間がかかるため、建築や入居のスケジュールが遅れてしまうかもしれません。期日が決まっている方は早めの行動を心がけ、再審査になっても余裕がある日程で進めましょう。
再審査でも通過するか不安な方は、頭金を増やしたり、ペアローンを利用したりすることも検討しましょう。借入額が減る、あるいは収入が増えることで、審査に通過しやすくなります。
もし対処法にお悩みの場合は、不動産会社やハウスメーカーの担当者に相談してください。どちらも住宅ローンに関する相談を受け付けているケースが多く、適切なアドバイスを受けられるはずです。
まとめ
住宅ローンを借り入れるためには、いくつもの手続きを経る必要があります。また、仮審査から融資実行まで1カ月半以上かかるほか、審査が通らないなど思わぬ事態により、想定よりも時間を要してしまう可能性もあります。そのため、スケジュールに余裕を持って進めることが大切です。
住宅ローンの手続きは複雑なため、進め方や必要書類などをすべて把握するのは難しいものです。不動産会社やハウスメーカー、金融機関などに相談しながら進めることをおすすめします。
[筆者プロフィール]
八木 友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などを行う。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。