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Sweden 旅の途中で(2012年③)イェータ運河を行く

この記事の目次

掲載号:The SWEDEN HOUSE No.149

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イェータ運河を行く

その昔、どこの国でも物資の輸送は航路だった。スウェーデンと外国との海運では、スカンジナビア半島の半分ほどをぐるりと回らなければ、バルト海に面する首都のストックホルムには寄航も出航も出来なかった。少々もどかしい航海だ。

1810年、このU字型航路から一直線で首都に向かうという国土横断運河の建設がはじまった。イェーテボリ(ヨーテボリ)からストックホルムまでの運河航路、それが通称「ブルーリボン」と呼ばれるイェータ運河だ。建設後は木材や鉄鉱石などの物資が東西を盛んに行きかったという。遊覧船や客船も賑やかだったらしい。

現在は、輸送のほとんどが車や列車に変わった。国土横断は車なら7時間ほど。だから、イェータ運河は今は輸送に利用されることはない。利益優先の国ならば、不要なものとして埋められてしまったかもしれない。でも、この国では夏を楽しむ人々のためにと全区域が航行可能だ。夏の盛りはヨットやボート、観光船でにぎわっている。

その上、3隻の蒸気客船は造船当初のままで今も健在。航海方法・水門通過・停泊先なども、全てが昔のままのスタイルだ。

私は全行程を行く三泊四日の蒸気客船に乗り込んだ。行程には、バルト海や大小の湖沼通過も含まれるが、楽しいのは船の幅ほどの狭い運河航路部分。手が届きそうなところに牛が草を食み、ピクニックの人が居る。

中でもとびきり面白いのは65箇所もある水門通過。水門の一つ一つを通過していく様は、まるで船が階段を登るようで興味深々。

あんまり楽しくて、人に話したくて、とうとう私は絵本を出版することにこぎつけた。
(福音館書店・たくさんのふしぎシリーズ「イェータ運河を行く」1993年)


Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。

[ホームページ]www.setsukofukai.com

 

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