団信とは「団体信用生命保険」の略で、住宅ローンを組む際に申し込む生命保険です。ほとんどの場合、住宅ローンは数千万円規模の大きな金額で借り入れることになります。そのため、予期せぬ事態が起きた場合に、住宅ローンを返済できなくなるなどの不安を抱かれる方は少なくありません。団信は、そうした事態に備えるための心強い保険です。本記事では、団信について詳しく説明します。
団信(団体信用生命保険)とは?
団信は、住宅ローンの債務者に万一の事態が起きた際、残された債務が返済されることを目的とした保険です。住宅ローンの契約時に加入するのが一般的で、融資開始後は加入できない商品がほとんどです。例外はありますが、一般的に住宅ローンを契約する際には、団信への加入が必須となります。
なお、ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になった際に保障される「一般団信」が基本ですが、その他にも保障範囲の異なるいくつかの種類があります。種類や違いについては、後ほど詳しく解説します。
団信の契約には健康状態の告知が必要

団信の契約には一般的な生命保険と同様、健康状態について告知書の提出が必要になります。
告知内容に誤りがあった場合
告知書の項目に該当するような病気や怪我の治療歴があれば、しっかり事実を伝えなければなりません。もしも告知内容に誤りがあると、義務違反として保険契約が解除されたり、保険金が支払われなくなったりすることもあります。
一般団信の審査を断られた場合
告知内容によっては、一般団信の審査を断られることがあります。しかし、そんなときは「ワイド団信」(後述)にするか、共働きなら契約者を配偶者にしたりペアローンにしてみる(ペアローン向け団信)と契約できる可能性があります。また、フラット35のように団信の加入が任意となっているローンもあります。たとえばフラット35でローンを組み、より加入しやすい条件の民間の生命保険を団信の代わりとして付保するといった方法も考えられるでしょう。
団信の魅力は?
団信の魅力は、病気などで返済が難しい状態になった場合でも、ローンを完済することができる点です。近年では団信の内容の競争が激化し、保障内容がより手厚くなっています。
各保険会社が、これまでになく安心度の高い保障を備えた団信を開発。その中でも特に注目すべきは、後ほど詳しく解説する「がん団信」と言えるでしょう。たとえば金利を上乗せすることなく、がんになった場合のローン残高が半減するような商品もあります。
また、現在は医療技術の進歩に伴って、がんの早期発見・早期治療が可能になりました。健康診断で初期のがんが見つかった場合、がん団信に加入していれば住宅ローンの支払いが免除されて“ゼロ”になることも。つまり、早期治療により完治すればがんも消え、住宅ローンも消えるということ。これだけ心強い保険は、恐らく他にはないでしょう。そのため、万一 を考えても安心ですね。
ただし前述の通り、団信は健康状態によって審査に通らないことがあります。そうなると住宅ローンを借りられなくなるかもしれません。そのため、住宅ローンの申し込みおよび団信の加入は健康なうちに行うことが大切です。健康な今だからこそ、進化した団信で大きな安心を手に入れてください。
団信の種類と保障内容
団信には「一般団信」のほかに、保障の条件や引受け条件の異なるいくつかの種類があります。内容に応じて上乗せになる金利が異なるので、違いを確認して検討しましょう。
一般団信
一般的な死亡や高度障害状態を保障する内容です。生命保険の死亡保障と同じ保障内容で、通常は住宅ローンの金利に含まれています。
ワイド団信
ワイド団信は、健康状態が理由で一般的な団信に加入できない場合に、引き受け基準を緩和して加入できる可能性のある団信です。たとえば、うつ病で薬を処方されているなど、一般団信で申し込めない場合でも契約できることがあります。なお、一般的な団信よりも金利は0.3%程度高めに設定されています。
疾病保障付団信
死亡や高度障害状態のみでなく、がんや急性心筋梗塞、脳卒中等の特定の病気で所定の状態に該当した場合に、ローンの返済が免除になります。疾病保障付団信は種類が豊富で、保障内容も以下のようにさまざまです。
がん団信
がんと診断された場合等に、ローンの免除・減免を受けることができます。ただし、「上皮内がん」と呼ばれる初期のがんなどが対象にならなかったり、少額の保険金が支払われるのみだったりすることもあります。すべてのがんが対象になるわけではないので、事前に保障条件を確認しましょう。
特定疾病保障団信
がんを含め、3大疾病・8大疾病・11疾病・全疾病保障など、金融機関によって保障範囲もさまざまです。該当する疾病を発病すれば必ず免除になるわけではなく、「60日以上の労働制限を受けた場合」などの要件があるかもしれません。どのような場合に免除されるのか、よく確認しておきましょう。
その他、保険会社によっても種類は多様
他にも要介護状態や高度障害に満たない条件にも対応した保障など、保険会社によってさまざまな団信があります。住宅ローンは金利だけでなく、団信の保障内容も踏まえて検討すると良いですよ。
団信を選ぶうえでのポイントは?

団信を契約する場合は、以下のようなポイントを踏まえて選ぶのがおすすめです!
保険料はいくらか
通常の団信は、保険料が金利に含まれています。しかし、保障範囲の広い団信は、0.2~0.3%程度が金利に上乗せされることが一般的です。団信だけでなく、現在加入している生命保険でカバーされている範囲や保険料を比較し、どちらをどう使うのが有利か検討しましょう。
保障の範囲が十分か
どのような状態になったときに保障が適用されるのか、あらかじめしっかり確認しておきましょう。団信の保障内容によっては保障の範囲を広げるのではなく、民間の生命保険で加入しやすく、希望する保障内容に合った商品を検討する方が良い場合もあります。
保険料の支払い条件が高くないか
生命保険商品の場合、年齢や性別によって保険料が異なるほか、健康状態等によって差が生じることもあります。しかし、団信では基本的に、そうした内容で保険料の違いは生じません。生命保険商品の保障範囲と被る場合がありますので、どちらで備えるべきか比較して選びましょう。団信の場合は年齢が高い人ほど、一般の生命保険と比べると割安でリスクに対処できます。
団信を契約する際の注意点
団信を契約する際には、以下のような点に注意しましょう。
生命保険料控除の対象にならない
生命保険商品は、加入すると生命保険料控除の対象になります。そのため、団信も同じだろうと考えている方は少なくありません。しかし、実際は団信に加入しても、生命保険料控除の対象にはなりません。間違えて認識しやすいので、注意してください。
団信の種類や保障内容は金融機関によって異なる
また、団信の種類や保障内容は、金融機関によって異なります。たとえば金利は少し高いけど、団信の条件が良いという場合もあります。細かな条件まで比較すると、とても複雑で判断に迷ってしまうかもしれません。しかし、こういった部分を比較し、生命保険商品と併せてリスクへの対策を考えると、賢く備えることができます。
まとめ
この記事では、団信について詳しく解説しました。なんとなく言葉は知っていたという方も、その意味や魅力、契約時の注意点などご理解いただけましたか?
以前と比べて団信の保障内容は多様化し、上手に活用すれば、低コストで幅広いリスクに対応できるようになりました。ただし、よく理解しないまま保障内容を決めてしまうと、必要なリスクに対処できなかったり、不必要に高いコストを払ってしまったりすることもあります。住宅ローンを選ぶ際には、団信についても比較しながら金融機関を選びましょう!
[筆者プロフィール]
小川 洋平
CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。経営者を中心に、財務戦略や資産形成のサポートを行う独立系FP。住宅購入相談も得意とし、自らもマイホーム購入を経験。自身が学んだ建築や家づくりの知識を活かしながら顧客にローンや補助金、住宅性能等についてもアドバイスしている。複数の工務店とのネットワークも築き、住宅購入に関わる資金計画・税金対策・ローン設計から、購入後の資産形成まで一貫したアドバイスを行い、住まいとお金、両方の視点から“後悔しない選択”を支援している。FPオフィスclientsbenefit代表FP。