戸建てを購入する際、親から資金援助を受けるケースは少なくありません。
住宅購入は人生でも大きな支出のため、家族からのサポートが大きな助けになることもあります。 ただし、資金の受け取り方によっては贈与税の対象になる場合があり、制度を知らないまま手続きを進めてしまうと、後から申告や税金の対応が必要になることもあります。
本記事では住宅購入時に知っておきたい贈与税の基本的な仕組みや、住宅資金の援助を受ける際に押さえておきたい制度について解説します。
贈与税とは?基本の仕組みを理解しよう
贈与税とは、財産を無償で受け取ったときに課される税金です。原則として、1月1日~12月31日までの1年間に贈与を受けた財産から110万円を差し引き、残った金額に対して課されます。贈与税額は残った金額に以下の税率を乗じ、控除額を差し引いた金額です。

※税率・控除額は一部を抜粋しています
※特例税率の場合です(贈与を受けた年の1月1日現在、18歳以上の方が直系尊属(両親や祖父母など)から贈与を受けたときに利用される式)
両親・祖父母などの親族から住宅購入資金の援助を受ける場合でも、原則として課税対象になります。そのため、住宅購入時に親から資金援助を受ける予定がある場合は、事前に贈与税の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
参照元:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
住宅取得等資金の非課税制度
住宅取得等資金の非課税制度とは、両親や祖父母から住宅購入資金を受ける場合に、一定額まで贈与が非課税になる制度です。2026年2月現在、省エネ等住宅に対しては1,000万円、その他の住宅は500万円までの贈与が非課税となります。本制度の適用を受けるには、以下のような条件を満たさなければなりません。
<贈与を受ける方の主な条件>
● 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上
● 贈与者が直系尊属(父母・祖父母など)
● 贈与資金を住宅取得に充てること
など
<取得する住宅の主な条件>
● 住宅の面積が登記簿上40㎡以上240㎡以下
● 住宅の床面積の2分の1以上を受贈者が居住のために利用する
など
なお、制度の適用を受ける場合には、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに、贈与税の申告をおこなう必要があります。節税のために制度を利用したいと考えたとしても、条件を満たしていないと、贈与税が課されて資金計画どおりに進まなくなる可能性もあるため注意しましょう。
参照元:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
親からの資金援助が「贈与」になる・ならないケース

住宅資金援助が贈与になるかどうかは、資金の出どころや名義などによって判断されます。家づくりを進める際に、親子間での資金のやりとりがどのように扱われるのかを理解しておくことが大切です。
贈与になるケース
● 現金を口座振込で受け取った
● 頭金や建築費用を肩代わりしてもらった
● 親が資金を負担しているにもかかわらず、住宅の名義(持分) を子どもだけにした
住宅資金を受け取って返済しない場合や、実質的に無償で財産を取得した場合などは、原則として贈与に該当します。
なお、借りたつもりでも借用書がない、一般常識とかけ離れた低い金利で返済するといった場合も、贈与とみなされる点に注意してください。両親と契約書を交わすのは抵抗があるとしても、税務署の調査が入ったときに証拠を示せなくなってしまいます。
贈与にならないケース
● 一緒に住むことを前提に親が自分名義で購入した
● 親が持分を持ち、持分割合に応じた支払いをしている
● 年間で受けた贈与の総額が110万円以下だった
一緒に住むとしても、親名義の家なら贈与がおこなわれたとは言えないため、贈与税は課されません。仮に賃料を無料にして住むとしても、使用貸借による利益はゼロ円として取り扱われており、贈与税の課税対象外です。
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。そのため、1年間に受け取った贈与額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。ただし、毎年同額を計画的に贈与する場合などは課税上の扱いが変わる可能性もあるため、資金援助を受ける際は事前に確認しておくと安心です。
参照元:国税庁「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
贈与税がかからない場合も申告は必要

年間110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税の申告が必要です。住宅取得等資金の非課税制度を利用した結果、計算上で贈与税が非課税になるとしても、制度の利用を申告します。
税務署は申告額の正誤を調査するため、資金が振り込まれた銀行口座や不動産売買契約書などを確認します。書類が不足していると申告額が違うのではないかと疑われる可能性があるため、証拠となるものは保管しておきましょう。また、贈与税の課税対象になるにもかかわらず、申告を忘れた場合は追徴課税されます。
贈与税の申告手続き
贈与税の申告は受贈者がおこないます。申告期間は贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日で、申告には以下の書類が必要です。
● 贈与税申告書
● 本人確認書類
● 贈与契約書(任意)
また、住宅取得等資金の非課税制度を利用する場合は、以下の書類が追加で必要となります。
● 受贈者の戸籍謄本
● 受贈者の源泉徴収票や確定申告書
● 売買契約書もしくは工事請負契約書
● 住宅性能を証明できる書類
申告は税務署の窓口でおこなう以外に、電子申告(e-Tax)も可能です。贈与税申告書の書き方などに不安があれば、税理士や住宅メーカーに相談してから申告しましょう。
生前贈与のメリットと注意点
親から住宅購入資金の援助を受ける際には、生前贈与という形で資金を受け取るケースがあります。住宅購入のタイミングで資金援助を受けられると、住宅ローンの借入額を抑えられるなど、家計の負担軽減につながる場合もあります。
ただし、贈与には税務上のルールがあるため、資金の受け取り方や申告の手続きなどを事前に確認しておくことが重要です。また、制度は税制改正によって変更されることもあるため、必要に応じて専門家に相談することも検討しましょう。
参照元:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
贈与税のよくある失敗例
贈与税について、よくある失敗事例と概要を以下にまとめました。

住宅購入では、親子間での資金のやり取りも含めて資金計画を整理しておくことが大切です。住宅会社や金融機関、税理士などに相談しながら進めることで、手続きの漏れやトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
住宅資金の援助を受ける際は、贈与税の基本的なルールを理解しておくことが大切です。制度を正しく理解しておけば、家族からのサポートを受けながら安心して家づくりを進めることにつながります。
贈与税に関する制度は、税制改正によって変更されることもあります。そのため、 住宅購入を検討する際は、住宅会社や専門家に相談しながら資金計画を立てるとよいでしょう。
[筆者プロフィール]
八木 友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などを行う。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。