GX(グリーントランスフォーメーション)志向型住宅という言葉、聞いたことはありますか?GX志向型住宅を建てると補助金を受けられますが、その条件や補助額などは、詳しく知らない方が多いかもしれません。
GX志向型住宅とは、ZEH基準の水準を上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型の住宅です。GX志向型住宅を建築すると、「子育てグリーン住宅支援事業」の補助金を受けられます。ただし、予算上限に達すると一時受付停止となるため注意が必要です。
この記事ではGX志向型住宅となるための条件やメリット、注意点、補助を受ける方法について解説します。
GX志向型住宅の条件は?
以下の項目を満たした住宅を、「GX志向型住宅」と呼びます。
● 断熱等性能等級:6以上
● 一次エネルギー消費量の削減率(再生可能エネルギーを除く):35%以上
● 一次エネルギー消費量の削減率(再生可能エネルギーを含む):100%以上
● HEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入
それでは、各項目の内容について見ていきましょう!
断熱等性能等級
GX志向型住宅と認められるには、断熱等性能等級6以上の性能が必要です。断熱等性能等級とは、外壁や窓などの外皮の断熱性がどのくらいか、結露を防ぐ対策ができているかなどを数値で評価したもの。2025年5月現在、断熱等性能等級は以下の表のように7つに区分されています。

等級6はZEH基準よりも高く、冬場の室温が13度(概ね本州以南)を下回らないといわれるほど断熱性が高い建物です。ZEHですら高性能住宅と呼ばれていることからも、GX志向型住宅の断熱性がいかに高いかがわかります。
【参考】国土交通省|住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設
一次エネルギー消費量の削減率(再生可能エネルギーを除く)
GX志向型住宅は、一次エネルギー消費量の削減率を35%以上とする必要があります。一次エネルギー消費量とは、建築物で使われている設備機器の消費エネルギーを熱量に換算した値のこと。冷暖房や照明、換気扇などの設備を使うに当たって消費されるエネルギーから、太陽光発電設備といった再エネ設備で生んだエネルギーを指し引いたものが一次エネルギー消費量です。
ただし!ここで、注意点があります。GX志向型住宅では、再エネ設備で生んだエネルギーを差し引かずに削減率35%を達成する必要があります。再エネ設備以外で一次エネルギー消費量を抑える場合、以下のような方法を用います。
● 断熱性能を高めて冷暖房効率を上げる
● ヒートポンプ技術といった高効率の給湯設備を設置する
● 照明設備をLEDにする
これらの方法を駆使して、再エネ設備のエネルギー以外で消費量を35%以上削減します。
【参考】国土交通省|ラベル項目の解説
一次エネルギー消費量の削減率(再生可能エネルギーを含む)
GX志向型住宅として認められるには、再エネ設備のエネルギーを含めて一次エネルギー消費量を100%以上削減する必要があります。つまり、再エネ設備のエネルギーを除いた削減率を35%以上にし、かつ再エネ設備のエネルギーを含めて100%以上にしないと、GX志向型住宅とは認められません。
再エネ設備のエネルギーを高めるには、太陽光発電システムのパネルを多く、日が当たりやすい方角に設置する必要があります。ただし、パネルを多く設置するには、それだけ機材購入と設置に費用がかかります。また、重量に耐えるだけの補強もおこなう必要があります。
HEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入
GX志向型住宅には、HEMSの導入が必要です。HEMSとは「Home Energy Management System」の略称で、家庭でのエネルギー使用状況を表示したり、コントロールして住宅の快適性や省エネを支援するシステムです。HEMSを設置すると、パソコンやスマホなどでエネルギーの使用状況を確認できます。
2022年のデータでは、戸建てにHEMSが設置されている割合は約4.1%と、まだまだ低い水準です。国はHEMSによるエネルギー管理の促進を推進しており、設置水準を高めるために補助の条件にしていると考えられます。
【参考】環境省|家庭のエネルギー事情を知る
GX志向型住宅のメリット

GX志向型住宅を建築し居住することには、さまざまなメリットがあります。具体的には、以下のような内容です。
● 光熱費の削減
● 環境への配慮
● 健康リスクの低減
● 資産価値の向上
● 補助金を受けられる
それでは、それぞれ詳しくみていきましょう。
光熱費の削減
GX志向型住宅は高い断熱性と省エネ性能を備えているので、光熱費の削減が期待できます。断熱性が高いと外気の影響を受けにくく、室内の温度が一定に保たれやすくなります。その結果、冷暖房の使用時間や頻度が減り、エネルギー消費を抑えられるのです。
そして、光熱費の削減に加え、太陽光発電設備による売電収入も期待できます。夏場のような曇りや雨が少ない時期なら、売電収入で光熱費の削減につながるでしょう。光熱費が上昇している近年、これは大きなメリットといえます。
環境への配慮
GX志向型住宅は省エネ性能が高く、一般的な住宅に比べてエネルギー消費量を大幅に抑えることができます。たとえば給湯設備に高効率なエコキュートを使えば、外気の熱を利用して湯を沸かすため、消費電力を削減できます。電力の使用が減らせれば、それを発電するためのエネルギーも減り、結果として二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を抑えられます。つまりGX志向型住宅に住むことは、環境に配慮した生活にもつながるのです。
健康リスクの低減
GX志向型住宅に住むと、高い断熱性により室内の温度差が生じづらいため、ヒートショックなど健康リスクの低減にもつながります。ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こること。心筋梗塞や脳卒中につながる恐れもあり、とても危険です。特に冬場の浴室や脱衣所など、温度差が生じやすい場所で起こりやすいとされています。
資産価値の向上
GX志向型住宅は、高い断熱性や省エネ性能を備えていることから、一般的な住宅に比べて資産価値が維持されやすい傾向にあります。快適な生活が送れるうえに光熱費の抑制や健康リスクの低減といったメリットがあるため、買い手にとって魅力的な物件といえます。不動産は需要が高いほど売却価格が高くなるため、高性能な住宅は将来的な売却や相続時にも有利になります。長く安心して暮らせる住まいや、資産を次世代に残したい方にとっても、検討する価値の高い住宅です。
補助金を受けられる
GX志向型住宅と認定されると、「子育てグリーン住宅支援事業」で1戸あたり160万円の補助を受けられます。これは大きな魅力ですよね!また、GX志向型住宅の場合は建物性能以外の要件がなく、補助を受けやすいのもメリットです。たとえば長期優良住宅やZEH水準の住宅では、子育て世帯または若者夫婦世帯であることが条件であるため、世帯構成によっては補助を受けられない場合があります。
GX志向型住宅の注意点
GX志向型住宅にはメリットだけではなく、以下のような注意点もあります。
● コストが高い
● 太陽光発電システムの設置が必要
● 性能が立地・周辺環境により異なる
それでは、具体的にご説明しましょう。
コストが高い
GX志向型住宅は一般的な住宅に比べて、初期コストが高くなる傾向があります。なぜなら、高い断熱性や省エネ性を実現するためには、断熱材を多く使用したり、複層ガラスや高性能な設備を導入したりする必要があり、材料費や施工費の増加につながるためです。ただし、GX志向型住宅を建築すれば、「子育てグリーン住宅支援事業」等の補助制度を活用することで、最大160万円の補助が受け取れます。さらに、高い断熱性と省エネ性により、光熱費の削減も期待できます。初期コストはかかるものの、長期的な視点で考慮すると、経済的なメリットも十分に見込める住宅といえるのではないでしょうか。
太陽光発電システムの設置が必要
GX志向型住宅では、再エネ設備として太陽光発電設備を設置する必要があります。しかし、太陽光発電設備は設置にかかる費用が高額。こうした負担を軽減するためには、自治体による補助制度の活用が有効です。
性能が立地・周辺環境により異なる
GX志向型住宅のように高性能な住宅であっても、その性能の効果は立地や周辺環境によって変わることがあります。たとえば、近隣に背の高い建物が多い場所、あるいは降雪量が多い地域だと、太陽光発電設備の発電量は減少しやすくなります。その結果、売電収入が得られにくくなり、光熱費の削減効果が想定より小さくなってしまう可能性があります。また、災害リスクの高い地域に建てる場合にも注意が必要です。たとえば土砂災害特別警戒区域や災害危険区域などに該当すると、「子育てグリーン住宅支援事業」の補助対象外になることがあります。GX志向型住宅を検討する際は、発電条件や補助金の対象要件に影響がないか、事前に立地や周辺環境を確認することが大切です。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|新築住宅の立地等の除外要件
補助金の申請条件と方法

戸建てのGX志向型住宅で「子育てグリーン住宅支援事業」の補助金を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
● 床面積が50㎡以上240㎡以下である
● 住宅の立地が「立地等の除外要件」に該当しないこと
● 支援事業の対象となる住宅の性能が確保できているか証明できる
● 建築主自らが居住する
● 未完成または完成から1年以内であり、人の居住の用に供したことのないもの
● 2026年1月31日時点で基礎工事より後の工事の出来高が160万円以上である
※グリーン住宅支援事業者として登録、かつGXへの協力に係る意思表明をおこなった建築会社に工事を依頼する必要があります。
交付申請は、基礎工事が完了した後におこないます。また、事前に予約申請することで、予算を一時的に確保することが可能です(3ヶ月間まで)。
「子育てグリーン住宅支援事業」の申請は建築会社が進めるので、建築主がおこなう手続きはありません。ただし、申請に必要な「建築主の本人確認書類」だけは建築主が用意します。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|注文住宅の新築
GX志向型住宅を建てる際の留意点
GX志向型住宅を建てる際には、以下の点に留意が必要です。
● 対象外となる地域がある
● 併用できない補助金がある
● 予算上限と申請期限がある
● 補助金は建築主に直接振り込まれない
それぞれ、以下で詳しく説明します。
対象外となる地域がある
GX志向型住宅を建てる地域が以下に該当する場合、補助の対象外になってしまいます。
● 土砂災害特別警戒区域の住宅
● 災害危険区域の住宅
● 市街化調整区域かつ土砂災害警戒区域もしくは浸水想定区域の住宅
● 都市再生特別措置法の規定による勧告に従わなかった旨が公表された住宅
ただし、区域内だとしても、すべての住宅が対象外となるわけではありません。一部地域では対象となるケースもあるので、補助の対象になるかどうか建築会社に調べてもらいましょう。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|新築住宅の立地等の除外要件
併用できない補助金がある
「子育てグリーン住宅支援事業」の補助は、原則として他の国の補助金と併用できません(住宅の本体工事に対する補助が対象の場合)。
ただし、自治体独自の補助制度(国費を財源としないもの)については併用が認められています。各地方公共団体は独自の補助制度を設けているので、どの制度と併用できるのかあらかじめ建築会社に確認しておきましょう。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|交付申請等の要件について
予算上限と申請期限がある
「子育てグリーン住宅支援事業」には予算の上限が設定されており、申請数が上限に達した時点で受付終了となる可能性があります。申請予約の期限は2025年11月30日まで、交付申請の期限は2025年12月31日までです(※2025年6月時点)。
補助を確実に受けたい場合は、できるだけ早めに建築会社に相談しましょう。この制度は全国的に実施されており、多くの方が利用を検討しているため、早めの行動が安心につながります。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|事業概要
補助金は建築主に直接振り込まれない
「子育てグリーン住宅支援事業」の補助金は、建築主に直接振り込まれません。補助金を直接受け取るのは、建築会社です。そのため、どのように補助金を還元してもらうのか、事前に建築会社と合意しておくことが重要です。
たとえば、建築会社から補助金額を後日返金してもらったり、工事代金から差し引いてもらったりという方法が考えられます。万一のトラブルを避けるため、補助金の取扱いについて、契約書などの書面で明確に取り決めておくことをおすすめします。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業|事業概要
まとめ
GX志向型住宅とは、ZEH水準を上回る高い省エネ性能を備えた高性能住宅です。光熱費の削減や快適な室内環境の実現など、さまざまなメリットがあります。一方で、太陽光発電設備の設置や断熱性・省エネ性の向上のため、初期コストが高くなる点には注意が必要です。ただし、「子育てグリーン住宅支援事業」等の補助制度を活用すれば、経済的な負担を軽減することができます。
GX志向型住宅の建築を検討する際は、仕様に対応した設計や施工が可能な建築会社を選ぶことが重要です。
スウェーデンハウスでは、GX志向型住宅の基準を満たす性能を標準仕様で備えています。太陽光発電設備を設置すれば要件を満たせますので、まずはスウェーデンハウスのホームコンサルタントまでお気軽にご相談ください。
[筆者プロフィール]
八木 友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などを行う。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。