バリアフリー住宅の基礎知識と間取りの工夫

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バリアフリー設計とは、住宅の段差を解消するだけでなく、安全かつ快適に暮らせる住環境を実現するための考え方です。近年は、高品質な住宅ストックの形成を目的として政府もさまざまな支援制度を設けており、若者世代からも注目されています。
若いうちは意識する機会が少ないかもしれませんが、将来的に親と同居する、あるいは終の棲家として住み続けることを考慮すれば、バリアフリー設計は住環境を左右する重要なポイントです。本記事では、バリアフリー住宅の基本と戸建て購入時に押さえておきたいポイントをご紹介します。戸建て住宅の新築や購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

バリアフリー住宅とは?

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バリアフリー住宅では、主に次のような設計が取り入れられます。

 ●  段差の解消
 ● 手すりの設置
 ● 引き戸の採用
 ● 十分な通路幅の確保
 ● 滑りにくい床材の使用

このように、高齢者・小さな子ども・妊婦・けがをしている方など、あらゆる人が暮らしやすいように配慮されています。

ユニバーサルデザインとの違い

バリアフリーと似た言葉に「ユニバーサルデザイン」があります。どちらも暮らしやすい環境づくりを目的としていますが、考え方には次のような違いがあります。

・バリアフリー
高齢者や障害のある人などが生活するうえで支障となる、段差や狭い通路などの障壁(バリア)を取り除く考え方です。

・ユニバーサルデザイン
年齢や身体能力、国籍などに関係なく、だれもが利用しやすいように最初から設計するという考え方です。

このように、バリアフリーが「既存の障壁を取り除く考え方」であるのに対し、ユニバーサルデザインは「はじめから誰もが使いやすい環境をつくる考え方」といえます。両方の考え方を取り入れることで、より快適で安全な住まいづくりにつながります。

住宅購入時にバリアフリーを意識すべき理由

住宅購入時にバリアフリーを意識することで、「生活満足度の向上」と「長期的な資産価値の維持」が期待できます。将来、身体機能の低下や家族の介護が必要になっても、不便を感じにくく、安心して暮らし続けられる点が大きなメリットです。
また、後からリフォームする場合に比べ、工事費や仮住まいなどの負担を抑えられ、生活環境の変化にも柔軟に対応できます。

バリアフリー住宅の間取りで工夫すべきポイント

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ここでは以下のエリア別に、バリアフリー住宅で工夫すべき設計のポイントを解説します。

  ●  玄関・廊下
  ●  トイレ・浴室
  ●  階段動線
  ●  外構・アプローチ

玄関・廊下

玄関に段差があると、出入りするたびに転倒の危険性が高くなるため、段差をなくすスロープの設置が効果的です。もしスロープを設置する幅がなければ、段差を登る動きに合わせた場所への手すり設置や、段差を低くするなどの対策もあります。
また、車いすの利用を想定し、廊下の幅は十分な広さを確保しておきましょう。その上で、滑りにくい床材や車いすでも開閉しやすい引き戸を採用すれば、移動効率が向上します。これは、後述するトイレや浴室でも同様です。

トイレ・浴室

トイレでは便座までの横移動、立ち座りの縦移動が発生するため、L型の手すりを設置します。適した設置は利用者によって変わるため、身長等から使いやすいよう検討してください。
また、浴槽に入るには足を高く上げる必要があるため、できる限り浴槽のまたぎ高(またぐ高さ)を低くする必要があります。そして、ヒートショックを防止するために、居室との温度差を小さくする対策も重要です。

階段動線

階段は転倒事故のリスクが高い場所であるため、バリアフリー化においても動線への配慮が求められます。具体的な対策としては、以下のようなものが効果的です。

 ●  勾配を緩やかにする
 ●  踏み面を広く取る
 ●  転落を途中で防止できる踊り場を設ける
 ●  階段の高さに沿って両側に手すりを設置する

また、将来的に階段が利用できなくなる可能性があると想定し、ホームエレベーターを設置できるスペースを設けるのも一つの方法です。設置に必要なスペースを知りたい場合は、専門業者に確認してください。

外構・アプローチ

外構やアプローチ部分も段差ができやすいため、バリアフリーを意識して設計する必要があります。車いすでの出入りを考慮し、勾配の緩いスロープや、利用者の体格や動作に合わせた手すりの設置、さらに出入りしやすい構造の玄関スペースを確保することが不可欠です。
また、夜間の外出時・帰宅時の安全性を確保するために、足元照明を設置して視認性を高めましょう。

PICK UP! 温度のバリアフリー

住宅のバリアフリーというと、段差の解消や手すりの設置を思い浮かべがちです。しかし、室内の温度差をなくす 「温度のバリアフリー」も重要な要素です。
特に冬場は、暖かいリビングから寒い洗面所や浴室へ移動した際の急激な温度差によって、 ヒートショックが起こるリスクがあります。こうした事故を防ぐためには、浴室や洗面所に暖房器具を設置する対策だけでは不十分です。住宅全体の気密性・断熱性を高め、家の中の温度差をできるだけ小さくすることが求められます。住宅の気密・断熱性能が高いほど、家全体の温度を安定させやすくなり、部屋ごとの温度差が生まれにくくなります。その結果、ヒートショックのリスクを軽減できるだけでなく、住まい全体の快適性や省エネ性能の向上にもつながります。
このように、真の意味でのバリアフリー住宅を実現するためには、設備だけでなく住宅性能そのものにも目を向けることが大切です。

バリアフリー住宅を建てる際の費用

バリアフリー住宅を建てる際の費用は、設計内容によって一般住宅より費用がかかる場合があります。中には一般住宅でバリアフリー仕様を謳っている場合もありますが、完全なバリアフリー設計ではないケースもあるので注意してください。
手すりやスロープなどを追加する場合、または設備の内容によっては、建築時に追加費用が発生する可能性があります。その場合は、介護保険の住宅改修補助金や自治体の助成制度の利用を検討しましょう。各制度の利用には条件があるため、補助や助成が受けられるかどうかは、ハウスメーカーなどに確認が必要です。

まとめ

バリアフリー住宅においては、段差の解消や手すりの設置といった設備だけでなく、年齢や身体状況に関係なく安心して暮らせる住環境を整えることが重要です。将来のライフスタイルの変化を見据え、間取りや住宅性能を含めて計画することで、長く快適に住み続けられる住まいになります。
住宅設計では、「モジュール」と呼ばれる設計上の基準寸法も住みやすさに影響します。一般的な日本の住宅では約910mm モジュールが多く採用されていますが、スウェーデンハウスでは1,200mm モジュールを基本としています。モジュールとは、壁や廊下、部屋の寸法を決める基準となるサイズのことで、この寸法が大きいほど空間にゆとりが生まれます。
1,200mm モジュールを採用することで廊下や階段、居室などにゆとりが生まれ、車いすでの移動や介助が必要な場面でも動きやすい空間を確保しやすくなります。広めの通路幅は日常生活でも使いやすく、家族が並んで歩いたり荷物を運んだりする際にも快適です。

さらに、スウェーデンハウスでは段差などの物理的なバリアだけでなく、家の中の温度差を小さくする「温度のバリアフリー」にも配慮しています。高気密・高断熱性能を備えた住宅は家全体の温度を安定させやすく、リビングと浴室・洗面所などの温度差を抑えることが可能です。こうした住環境は、ヒートショックのリスク軽減や快適性の向上にもつながります。

このようにスウェーデンハウスでは、ゆとりある空間設計と高い住宅性能を組み合わせることで、家族が将来にわたって安心して暮らせる住まいを提案しています。バリアフリー住宅を検討する際は、設備や間取りだけでなく、住宅そのものの性能や空間設計にも目を向けて住まいづくりを考えることが大切です。

【参考】https://www.swedenhouse.co.jp/technology/universal/

 

[筆者プロフィール]

プロフィール_八木八木 友之(やぎ ともゆき)

宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
大手不動産仲介会社など計5社に勤める。不動産売買仲介・不動産買取・事業用定期借地権での法人テナント誘致などを行う。これらの業務に18年間携わり、不動産売買全般、借地、税金、相続などの分野に強い。現在、不動産・金融webライターとして執筆活動中。愛知県出身。

 

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