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Sweden 旅の途中で(2012年④)“森”に行こうよ!

作成者: スウェーデンハウス|2023.07.20

掲載号:The SWEDEN HOUSE No.150

“森”に行こうよ!

ストックホルムに住む友人に久しぶりに会った。ある博物館の庭でコーヒーを飲む。陽はうららかで、風が秋の香りを含んで優しく吹いていた。すると突然「これから森に水汲みに行くわよ!車で10分くらいね」と友人が言ったので私は耳を疑った。そこは都心の中心部だったからだ。

友人は私を車に押し込むと、5分後にもう一人の友人を乗せ10分後には本当に”森“に着いた。二人はボトルと小さな手籠を持参している。急展開に戸惑っている私にかまわず二人はどんどん林の奥へと歩いていく。そう、そこはダーラナの深い森とは違って広い林という感じなのだ。

「ここよ!」と言われた所を見ると、樹木の間の窪地から、清水がこんこんと涌き出している。二人はボトルを水でいっぱいにした。その嬉しそうなこと。立て札にマナーメモがあるので、けっこう人が来るようだ。

「さあ、今度はベリー摘み!」と私は促された。えっどこにそんなものが、と思っていると、ちょこまか動く二人の女性は早くも「あったあった」と籠に入れている。後ろから付いて歩くと、本当にブルーベリーがあちこちに。

べリーが採れてポロロンと手の中に落ちる感触はとても面白い。いつの間にか、私も夢中になっていた。

時間が経ち、私達は収穫を見せ合った。たっぷりの水に籠いっぱいのベリー。「水は今晩の夕食用に、ベリーはジャムにするのよ」と二人は嬉しそうに言った。

彼女たちは、特にナチュラル思考とか地場食品好きというわけではない。普段の生活は水道水だし、ジャムは食料品店でも買うという。ごく普通に生活しているけど心の中のどこかに常に森が存在しているらしい。

IT時代になっても”森“は、みんなの恵みの森なんだね。なんだか幸せな気持ちになった秋の午後でした。


Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。

[ホームページ]www.setsukofukai.com

 

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