掲載号:The SWEDEN HOUSE No.148
ダーラナ地方・レクサンドの夏至祭は、水の上から始まる。白樺の若葉をいっぱい飾りつけた木製のボートは、民族衣装も華やかな老若男女を乗せてレクサンド教会の船着場をめざす。
ボートは次から次と到着し船着場は民族衣装で花が咲いたよう。
水上から人々がやってくる伝統は、ひとつには各村からの交通に水路が一番便利だったこと。また深い森ではオオカミやクマなどに遭遇する危険性があるため、安全な水路交通を利用したらしい。
船着場からは教会が見える距離なので、皆ゆっくりと歩を進めて行く。レクサンド教会は、ゴシック様式などの壮大なものと真逆で、素朴で優しい建築物だ。内部はほとんど木造で、いたってシンプル。
オルガンや人々の賛美歌もやわらかく響く。この日は牧師様のお説教も人々の賛美歌も、夏至祭を迎える神聖さに満ちているように感じられた。
式次第が終わると、人々はゆっくりと祭の会場まで移動。バイオリンを演奏する人々は支度を始め、その演奏が始まるころ夏至の柱を担いだ人々が入ってくる。ここからはスウェーデンファンの方々ならおなじみのマイストング立て、そして伝統のダンスが始まることとなる。
夏至祭は国内の野外公園や学校、保育園などさまざまな場所で開催される。私もストックホルムのスカンセン野外博物館で夏至祭を見る機会があった。
ただ、ここダーラナ地方各地域の夏至祭は最も伝統色が濃いと誰もが認めることと思う。
何艘もの美しいボートが澄んだ水の上をすべるようにやってくる光景は、胸躍る体験だった。
Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。
[ホームページ]www.setsukofukai.com