掲載号:The SWEDEN HOUSE No.168
自分の感覚に合うホテルに泊まること、それは、私にとって旅の大きな楽しみのひとつ。ストックホルム市内には、何か所かお気に入りホテルがある。でも、それは豪華絢爛でもなく、モダン建築でもない。どちらかといえば渋いホテルかもしれない。
スカンセンがあるユールゴーデン島往復の市電が通る海沿いの道ストランドヴェーゲンは美しい通りだ。ヨットや遊覧船が波に揺れ、街並みは中世時代ほど古くはないが、風格ある建物が並んでいる。その中の一つがエスプラナーデ・ホテル。
小さなフロントで丸いボールが付いた鍵を受け取り階段を上って行くと、海側に何部屋もリビングルームがある。どの部屋も開放的な雰囲気で好ましく、家具調度がクラッシック。
ホテルは1910年開業とのこと。映画にもなった〝タイタニック号沈没〞が1912年だから、それ以前ということになる。
当時の航海待ちリビングルームがいくつもあるので(現在も寛いで良い)、大きいホテルという印象を受けたが、現在の客室数は34とか。小規模でとても静かなホテルだ。
一階の朝食室が、まさに古き良き時代の雰囲気そのもの。アールヌーボーの家具が優雅で、ステンドグラスの光も柔らかく優しかった。
Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。
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