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Sweden 旅の途中で(2012年⑤)クリスマスの街で

作成者: スウェーデンハウス|2024.12.19

掲載号:The SWEDEN HOUSE No.151

クリスマスの街で

クリスマスまであと少し。スウェーデンの小さな古都イスタッドでも街は買い物客が行き交い賑やかだ。刺激的な広告ネオンが無い街は、モミの木の緑とオーナメントが飾られていた。ショウウィンドウにはイエス様誕生のディスプレーやクリスマスグッズが人々の目を惹きつけている。

両側の建物の上に目をやると、各住居の窓辺もクリスマスの飾りで光が溢れている。教会の鐘の音もどことなく華やかに感じられ、街全体がクリスマスマーケットになったようだ。ただ、あたたかな雰囲気でも、ここは北欧。スカンジナビアの大地。石畳の道は冷たく身体は凍えそう。

街の中心まで歩いて行くと大道芸人がそこここで活躍していた。チェロの演奏者、手品師、ジャズメン等々。その中で、彫像に扮した芸人が居た。身体を真っ白に塗り、台に乗ってじっと動かない。多くの芸人は動いて人気を集めるのに、この芸は動かないことが仕事。私はしばらく見つめていたが、本当にギリシャ彫刻のように見事だったので、彫像青年の足元の箱にコインを数枚入れた。

すると、チャリンという音と同時に彫像がギクシャクと動きだしたのだ。

彫像の真っ白の手が驚いている私の手を取った。「冷たい!」と思わずひっこめようとすると、彫像は身体を折っておじぎをし、私の手にキスをした!

回りから拍手が聞こえる。立ち止まって様子を見ていた人々が笑顔で手をたたいているのだ。

氷のように冷たい唇だったけど、彫像青年の澄んだ目も美しかったし、なんだかちょっとホカホカした気分になってしまった。

 

Prof ile
深井せつ子
画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『一枚の布をぐるぐるぐる』など。北欧絵本『森はみんなの保育園』は昨年10月に出版された(全て福音館書店)。

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