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「森のしあわせ通信」スウェーデンの#MeToo運動と男女の格差

作成者: スウェーデンハウス|2022.09.22

スウェーデンの#MeToo運動と男女の格差

誰もが記憶に新しい#MeToo運動。セクシャルハラスメントや性的暴行被害についての告白に対する共感や賛同、またその言葉通り「私も!」と同じような被害を受けたことを新たに告白して、撲滅を図ろうとした社会運動です。この運動にはインスタグラムなどのソーシャル ネットワーキング サービス上で特定の話題を分類する際に、その単語にハッシュマーク(#)をつけて投稿する形態が利用されました。もともとは家庭内での性的暴力を受けていた少女から相談されたアメリカの市民活動家が、Me Tooという言葉をスローガンに性暴力支援の活動を行なっていたことに始まります。それが世界的な社会現象に至ったそもそもの発端は、アメリカの映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインが数十年にも及びセクハラを行ってきたとして、2017年10月にニューヨークタイムス紙が告発したことでした。この#MeTooは時間とともに熱を増し、多くの国でも賛同の声が相次ぎ、またそれに対する批判中傷も数多く発せられました。

この世界中の人々が注目した#MeToo運動が始まる数ヶ月前、日本ではフリージャーナリストの女性が報道記者の男性から受けた性的被害をメディアを通して告発し話題を呼びました。#MeToo運動が勃発した流れに乗って、この問題は社会で引き続き取り上げられ、同時期に作家の女性も同じような被害を告発しています。とはいうものの、日本では他国に比べると#MeToo運動は大きな話題へとは発展しなかったように見受けられます。

昨年12月に発表された世界経済フォーラム(WEF)の2018年グローバルジェンダーギャップ指数によると、1位アイスランド、2位ノルウェーに続きスウェーデンは第3位、そして第4位にフィンランドとなり、北欧勢が揃いました。そして日本は110位という結果が出ています。このように男女平等を推進するスウェーデンであっても、またそれが故、#MeToo運動に対して多くの国民が意識をすることとなりました。

#MeToo運動が始まった直後、スウェーデンでは有名な女優がツイッターでこの運動に賛同。これを皮切りに、アーティストやコメディアン、プレゼンターなどの多くの著名人がセクハラについて証言を始めました。この時、スウェーデンの外務省はこの動きを賞賛し、政治的な措置について議論を開始。また告発された人物が所属する大手メディアなどの企業では、続々と社内調査が実施され、TV番組の司会から降ろされる著名人や高いレベルの立場にいたジャーナリストが、その座を退くなど、さらにラジオ番組自体が中止となるなどの現象が起こりました。この状況は止まることなく、テクノロジーやIT業界、スポーツ業界、教育機関、さらには国会議員の間にも広まっていったのです。

男女平等が実践されているはずの北欧スウェーデンであっても、これほどまでの社会現象を引き起こすほどに、まだまだ女性の立場は確立されておらず、多くの問題と課題を抱えています。

Photo:Simon Paulin/ Imagebank. Sweden.se

自ら声を挙げるスウェーデン女性

このような状況下において、それでもたくましく日々を生きるスウェーデンの女性たち。セクシャルハラスメントや性的被害に悩んだり、賃金の差やキャリアの限界を感じた場合、自ら発言し行動し、ほんの些細なことからも改善を促すよう、知恵と勇気と行動力をフル活用しています。

例えば著者が経験したパーティーのスピーチ準備での出来事。登壇するスピーカーは総勢5名、それぞれトップの立場や重要な役割を持つ男性が行うことになりました。男性だから女性だからではなく、たまたま主要な人物が男性だったという認識から、今年で24年目となるスウェーデンとの関係を持つ著者でさえも、頭によぎりはしたものの、変更しませんでした。するとスウェーデンの女性担当者から、スピーカーに女性が入るべきである意見をもらったのです。こういった場面でも女性の社会的立場を念頭に置き、あらゆることを心がける行動が必要であると教わりました。

そもそも男女間でのセクシャルハラスメントがあることは言語道断ですが、#MeToo運動や男女平等を唱えることは、それを発言する一人ひとりが責任を持たなければなりません。男性も女性もそれぞれが自立をし、自立をするための4大要素である自己責任、自己選択、自己投資、自己判断を兼ね備える必要があります。小さなころからこの価値観を植え付けられ育ったスウェーデンの人々だからこそ、スウェーデンの#MeToo運動は社会や政治、教育の場面で注目され賛同され大きな社会現象となったのではないでしょうか。日本の#MeToo運動の盛り上がり方が意味するものとは何なのでしょう。

Photo:Magnus Liam Karlsson/ Imagebank. Sweden.se

Photo:Lena Granefelt/ Imagebank. Sweden.se

堀 紋⼦:北欧ジャーナリスト&コーディネーター

10代でスウェーデンに渡り、ガラスのテクニックとデザインを習得後、ストックホルムで活躍するガラス作家に師事。帰国後、創作活動の傍ら北欧の⽂化イベントを企画開催。その後北欧情報誌の現地コーディネートやプランニングに携わる。現在は独⽴し東京とパリにオフィスを持ちながら、ヨーロッパの暮らしや料理の提案、執筆、現地コーディネート、北欧企業のビジネスサポート、PRを⼿がけるなど活動の幅は多岐にわたる。

 

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